兵庫県明石市の海水浴場で2021年7月、水上バイクが遊泳客の近くを暴走するなどして明石市が刑事告発した事件で、神戸海上保安部は22日、加古川市の介護職員の男(45)を、殺人未遂と兵庫県水難事故防止条例違反容疑で書類送検した。水難事故防止条例違反容疑での摘発は兵庫県内初。全国的には2020年、神奈川県鎌倉市の由比ケ浜と千葉県勝浦市鵜原海岸での危険行為を摘発した(いずれも県迷惑防止条例違反での書類送検)。殺人未遂容疑を含めた適用は全国初とみられる。
書類送検容疑は2021年7月31日午後2時半ごろ、明石市の林崎松江海岸沖で水上バイク(長さ約3メートル)を航行し、遊泳者らの生命に危険を及ぼした疑い。
神戸海上保安部は、2021年7月31日に明石市林崎松江海岸で水上オートバイが遊泳者などの至近距離を航行した映像を入手、水難事故防止条例に規定する『危険操縦(プレジャーボートの操船に係る禁止行為)』の可能性があるとみていた。さらに8月8日の水上オートバイの航行についても、明石市が殺人未遂と条例違反容疑で神戸海上保安部に刑事告発していた。
捜査関係者によると、男は8月上旬に「映像に写っていたのは自分だ」と名乗り出て、その後の聴取に淡々と容疑を認める趣旨の供述をしており、「これほど大きな騒ぎになるとは思わなかった」などと話しているという。
兵庫県明石市は、水上バイクの危険行為に対し、懲役刑を含む罰則を盛り込んだ条例制定を目指し、3月議会に条例案を提出している。明石市によると、水上バイクの規制に関する条例で、市区町村が懲役刑を盛り込むのは全国初。シーズンとなる5月の大型連休までに公布、施行を目指す。
明石市では、大蔵海岸や林崎松江海岸など4か所に設ける「遊泳者安全区域」での危険行為を想定。これらの区域をブイで2重に囲み、遊泳者の安全を確保する。このブイを突破したうえで危険行為をした者を刑事告発の対象とする。シーズンとなる5月の大型連休までに高性能の監視カメラを13台設置、条例に基づき、兵庫県警や海上保安庁の取り締まりを強化する体制を取る。
陸地(道路交通法)と違い、海上(小型船舶操縦者法など)での法整備は十分とは言えない。兵庫県の条例では罰金が最高20万円、刑法上の殺人未遂罪の罰則は懲役5年以上となっていて、大きな隔たりがある。この中間を埋めるべく、明石市独自の条例を導入する必要があると判断した。条例案では6か月を上限とする懲役刑のほか、50万円以下の罰金を科す。懲役刑適用のハードルを下げることで抑止効果を高める狙い。