入社や入学、転勤など、新たな人間関係を築くスタートラインでもある新年度。特にビジネスシーンでは、ここ数年の新型コロナウイルス禍の影響で、リモートワークやオンライン会議を行う機会も増加し、コミュニケーションの方法が複雑化しています。SNSでは、「オンライン会議でマナー違反を注意されて驚いた」「新しいビジネスマナーって誰がどんな目的で作っているの?」という声も……。コロナ禍に誕生した新しいビジネスマナーはどのようなものなのか、日本接客リーダー育成協会代表理事の藤村純子さんに聞きました。
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――そもそも、ビジネスマナーって何ですか?
ビジネスマナーとは、暗黙の了解であり、仕事上での人間関係を築くための基礎です。お互いの仕事をスムーズに運ぶために必要なもので、生産性の向上にもつながります。特に新人の場合、まだ仕事の知識や技術がなくてもビジネスマナーをしっかり身に付けておけば、基礎ができている人として安心感を持たれ周りから大切にされるでしょう。反対に、よほどひどくない場合、誰かに指摘されることがないのもビジネスマナーです。知らないうちに損をしないように、一度は学んでおくと良いでしょう。また、正しい敬語やお辞儀の作法など形に捉われがちですが、大切なことは相手を大切に思う気持ちです。新人や部下、営業業務にあたる人だけが心がけるのではなく、上司やお客様の立場になったときにも意識するべきビジネスパーソンの常識ですね。
――ここ数年、リモートワークの普及などで新しいビジネスマナーが生まれていると聞いたのですが、本当ですか?
はい、本当です。ただ、何か明確な作法や決まりごとがあるというよりも、通常のビジネスマナーを応用したものがほとんどです。例えば、オンライン会議なら、お互いの顔がはっきりと見えるように画面の角度や明るさを調整すること、会議が円滑に進むように10分前くらいには入室し、音声やビデオの状況の確認をすることなどが挙げられます。また、社外の方との会議の場合、名刺交換が難しい場合もあるので、画面に表示されるユーザー名はローマ字ではなく漢字で、肩書きや役職なども記載しておくと相手にとってわかりやすいですね。会議後に「お見送りいたします」と声を掛け、先に退出しやすいように気遣うということも必要かもしれません。リモートワークをする上でのビジネスマナーは、通常のビジネスマナーとは違い、まだ確立されているものではありません。慣れない状況の中でスムーズに仕事を進めるための、ちょっとした気遣いだと考えれば良いでしょう。
――こういった新しいビジネスマナーは、どうやって作られるのですか?
誰かが考えて作っているものではなく、自然発生的に生まれるものだと言えます。ビジネスマナーは厳格なルールではなく、あくまで、仕事をスムーズに進めるための心掛けで、時代やその場の状況に応じて変化します。仕事をする中で遭遇する様々な場面で、多くの人が快適に過ごすための立ち振る舞いを明文化したものなので、センスのいい方なら、マナー自体を知らなくても自然とできているということも多いかもしれません。誰からも必要とされていない気遣いはマナーにはならないものです。また、すべてのビジネスマナーを実践する必要はなく、相手や場面に合わせて柔軟に対応することや、気遣いのポイントに気付いておくことが大切です。働く仲間やお客様を尊重し、その気持ちをお互いに示し合うことで、より仕事をしやすい環境を作ることができますよ。
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