成人年齢を18歳に引き下げる改正民法と18、19歳を「特定少年」と位置づける改正少年法が4月1日に施行された。
18、19歳の「大人」への仲間入り、あまりに突然の「成人宣告」に法律家の中では懸念の声もある。民事トラブルや刑事事件に詳しい藤本尚道弁護士(兵庫県弁護士会所属)に聞いた。
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そもそも18歳をもって成人と規定すべき「立法事実」(法律改正を合理的に根拠づける社会的事実)が存在するのか、という点で疑問を感じる。
この疑問は、そのまま成人年齢を引き下げた場合のデメリットの問題に直結するが、最も懸念されるのは、高校在学中に成人を迎え、突然、大人と同じレベルで法的責任を負わされてしまう点だ。これまでの「20歳成人」なら、高校を卒業して以降、少しは大人への階段を上るための猶予が与えられていた。
卒業後は、社会人への道を選んだり、大学に入ってアルバイトが可能になったりするなど、社会との接点も格段に増えていき、20歳を迎えるまでに社会的問題を経験する機会も多くあった。そして、未成年の間は、親権者の「契約取消権」によって守られることが、たいへん大きな「特権」だった。
ところが、成人年齢の引き下げは、社会との接点が乏しく、学業のみに専念させる現在の高校教育の中では、あまりに突然の「成人宣告」になりはしないか、と思う。
新成人がそのまま消費者問題の被害者となり得る懸念もある。詐欺的行為を生業(なりわい)とする者からみれば、新成人は格好のターゲットとなると言っても過言ではない。その意味で、高校教育において消費者問題をしっかりと教え込み、身に着けさせる必要性がある。今回の法改正では、教育のありかたについてこそ、大きな変革が要求されるという現実を忘れてはならない。