「但馬の小京都」と呼ばれる出石町(兵庫県豊岡市)には、近畿最古の芝居小屋「出石永楽館」(以下、永楽館)がある。文化財でありながら現役の芝居小屋として活用されている。このたび、永楽館館長の赤浦毅さんがラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西、木曜午後1時~)に出演。地元の人々の思いがつまった永楽館の魅力と「今」について語った。
永楽館は、1901(明治34)年に、歌舞伎をはじめ新派劇や寄席などが楽しめる芝居小屋として誕生した。大正時代後期には無声映画の上映が始まり、活動映画弁士らが活躍。昭和に入ると映画上映が中心となったが、芝居好きのオーナーの意向もあり、花道や人力で動く「奈落」などの舞台装置はそのままに、但馬の文化拠点として大いに栄えた。
しかし第二次世界大戦後、テレビの普及や娯楽の多様化により、1964(昭和39)年に閉館を余儀なくされる。この頃、同じように全国の芝居小屋が消えていったが、永楽館は土地・建物をそのまま維持。往時の姿を懐かしむ声も上がるようになり、44年の時を経て2008(平成20)年、市町村合併を機に大改修、復活を遂げた。
復元改修の際に鍵となったのは、「使う」にこだわったこと。保存状態が良好だった奈落は今も現役。観客席の畳には床暖房設備をいれるなど、ショーケースとしての文化財ではなく、「使える文化財」としての稼働を目指した。
復活時には、起爆剤として「杮落大歌舞伎」を開催。このとき、座頭(ざがしら)を務めた歌舞伎俳優の片岡愛之助さんは、「この小屋が僕を育ててくれたようなもんや。僕のライフワークです」と語り、以降、毎年愛之助さんを迎えての「永楽館歌舞伎」を開催している。(2020年、2021年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止)
番組パーソナリティーで劇作家・演出家の平田オリザさんは、「海外の演出家を永楽館に連れてくると、みんな顔がほほ笑むんです。こんな素晴らしい劇場は見たことがないと」と話し、自身が主宰する劇団「青年団」の公演でも、芝居小屋ならではの距離感に観客との心理的距離も縮まる、と体験談を披露。赤浦さんは「芝居小屋だから飲食も自由。地域の敬老会や謝恩会、同窓会にも使っていただいています。高校生が利用してくれるのもうれしくて」と地元住民にも愛されている永楽館の今を伝えた。
【「出石永楽館」公式サイト】
※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp