乗客106人が犠牲となったJR福知山線脱線事故から17年を迎えた25日、遺族らが、鉄道や航空などの重大事故で企業の刑事責任を問う「組織罰」の必要性を訴え、 事故現場近くのJR尼崎駅(兵庫県尼崎市)で署名活動を行った。
「組織罰」は、鉄道・航空事故などの際、運行する企業など法人自体に刑事責任を負わせる法律。イギリスの『法人故殺法(ほうじんこさつほう)』をはじめ、フランスなどでも法律が整備されている。
福知山線脱線事故をめぐっては、JR西日本の歴代4人の社長がATS=自動列車停止装置の整備について、企業の幹部として指示を怠ったなどとして、業務上過失致死傷罪で起訴されたが、「事故を予測できなかった」などとして、いずれも無罪判決が確定した。
現在の日本では、こうした大事故での責任は民事訴訟でしか問うことができない。 刑法の「業務上過失致死傷罪」は個人が対象で、法人には適用されない。事故で長女(事故当時23歳)を亡くした大森重美さん(73・神戸市北区)は「組織罰を実現する会」の代表を務めている。これまでにも署名を集め、法務省に提出し、要望もしたが、議論は尽くされず、世間にも浸透していないもどかしさを感じるという。「娘の死を無駄にしたくない。重大事故を起こしても誰も問われないのは不可解。無責任社会を作ってはいけない」とも訴える。今後、議員立法での組織罰制定の実現も視野に入れている。
大森さんは、北海道・知床半島沖で乗客・乗員26人が乗った観光船が遭難した事故(※)にも触れ「なぜ、こうした事故が繰り返されるのか。原因の究明はこれからだが、海が荒れるかも知れないと予想されたのに、なぜ出港してしまったのか。もし『利益優先』だったとすれば言語道断だ」と話した。
※発生3日目の4月25日までに犠牲者は11人、行方不明者は15人。第一管区海上保安本部は、業務上過失致死や業務上過失往来危険各容疑での立件を視野に捜査。
長女(事故当時40歳)を亡くした藤崎光子さん(82・大阪市城東区)も署名活動に加わった。藤崎さんは「組織罰を実現する会」が結成された2016年、ラジオ関西の取材に「『組織罰』は必ず実現できる。二度と私のような遺族をつくらないためにも、加害企業の責任を問うべき」と答えている。藤崎さんは今年、事故現場を訪れたが、慰霊式には参列しなかった。そして、JR西日本が赤字路線の削減方針を公表したことについて、「利益のことしか考えない体質は全く変わっていない。安全対策も進んだとは言えない」と指摘した。