小林聡美・松重豊出演 日常の“奇跡”がつむぐ切なく優しい大人のラブストーリー 映画『ツユクサ』レビュー | ラジトピ ラジオ関西トピックス

小林聡美・松重豊出演 日常の“奇跡”がつむぐ切なく優しい大人のラブストーリー 映画『ツユクサ』レビュー

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 ありふれた日常にこそ“奇跡”が…。そう気づかせてくれる映画『ツユクサ』。今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。

(C)2022「ツユクサ」製作委員会

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 ツユクサといえば、普段何気ない道端で見かける花。紫色や水色や白など、いろんな色があり、色によって異なる花言葉がありつつ、すべての色のツユクサに共通する花言葉は「尊敬」「変わらぬ思い」「なつかしい関係」なんだそう。万葉集にも載っていて、「月草」「鴨頭草」などと表記され、早朝に咲いて夕方には萎んでしまう花というはかなさから、恋する心の変化を表す時などに使われていたようだ。

 ただ、毒を持つ種類もあるという。犬や猫がアレルギー反応を起こすこともあるから、散歩のときに食べないよう注意を、と以前言われたことがある。ただ、そのツユクサの葉が草笛にちょうどいいというのは、この映画で初めて知った。

 五十嵐芙美(小林聡美)は、ある夜、運転中の車に何かがぶつかり、車は横転してしまう。港に隕石(いんせき)が落ち、その破片が飛んできて車に当たったらしい。なんと、隕石にぶつかるという経験をしたのだ。隕石がぶつかるというのは、1億分の1という確率らしく、それはある意味幸運なのか? それとも不運なのか??

 芙美は伊豆の海辺の町で一人暮らししている。工場で働く平凡な毎日で、職場の同僚の櫛本直子(平岩紙)と菊地妙子(江口のりこ)とは何でも話せる間柄。直子のひとり息子で10歳の航平(斎藤汰鷹)とは、うんと年が離れているけど、親友という不思議な関係だ。宇宙に興味を持って星を観察している航平によれば、隕石に遭遇するのは、まさに奇跡なんだそう。

 その頃、芙美の周りで小さな奇跡が起こり始めていた。行きつけのバーでマスター(泉谷しげる)と話していると、一人の男性がやってくる。彼は、芙美がジョギング中に出会ったことがある草笛の上手な人で、篠田吾郎(松重豊)といい、今はガードマンをしているらしい。

 ある日、彼を家に招き、手料理をご馳走する芙美。おいしそうに、いっぱい食べる吾郎。おずおずとだけれど、確実に二人の距離は縮まり、心ときめく芙美……。だけど、こんな風に自分の幸せを追い求めていいのか? ふと、心に引っかかるものを感じてしまう芙美。彼女がその海辺の町に引っ越してきたのには、悲しい過去があった。そして、じつは都会で歯医者をしていたという吾郎にも、何もかも捨ててその町に来た過去が……。

 直子の再婚相手の貞夫(渋川清彦)と航平は、うまくコミュニケーションが取れないでいたり、妙子は現在ワケアリの恋愛中だったり。淡々と、でも“そこそこ楽しく”日々を送っているように見える彼らだが、それぞれにいろんな問題・過去を抱えながら、懸命に今を生きているのだ。


『ツユクサ』<4月29日(金・祝)全国公開>
小林聡美
平岩 紙 斎藤汰鷹 江口のりこ
桃月庵白酒 水間ロン 鈴木聖奈 瀧川鯉昇 渋川清彦 泉谷しげる ベンガル
松重 豊
監督:平山秀幸 脚本:安倍照雄 
主題歌:中山千夏「あなたの心に」(ビクターエンタテインメント) 
配給:東京テアトル 2022/カラー/5.1ch/ビスタ/95分
(C)2022「ツユクサ」製作委員会
【公式サイト】
【公式ツイッター】
※各劇場の上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。

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