2021年に全国約200館で公開されたアニメーション映画『神在月のこども』が、日本の文化を世界へ発信する作品の一つとして全世界から注目を浴びている。今年7⽉には、フランス・パリに約25万⼈の⽇本ファンが集うことで知られる欧州最⼤のジャパンフェスティバル「Japan Expo」に招待され、そのオープニングで凱旋上映される。
このたび、本作の原作者で、映画製作で“コミュニケーション監督”も務めた四戸(しのへ)俊成さんが、ラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西、木曜午後1時~)に出演。自身のキャリアや映画製作までの道のりを語るとともに、番組パーソナリティで劇作家・演出家の平田オリザさんと、多義的な「コミュニケーション」について語り合った。
四戸さんはもともとコピーライターやプランナーとして活躍。2009年頃からは、「コミュニケーションデザイン」を軸に活動を始めた。コミュニケーションデザインとは、商品や作品、都市などが持つ魅力を、知らない人にどのような「手段」を使って発信していくのか、その関わり方を設計・実現するもの。
自身初の長編作品『神在月のこども』は、日本神話を題材に、日本という島国が持つ魅⼒を、アニメーションで翻訳して世界の人々に届けるという試みでもあった。四戸さんは「普通は原作が先にあって、聖地巡礼があとからついてくるのですが、我々の場合は先に舞台や題材があり、ツーリズム前提でコミュニケーションを組み立てていきました。東京や京都だけではない、行きたい日本を増やしていきたい。物語の舞台である1都1府8県に来ていただくことも含めて『コミュニケーション』ととらえて設計しました」と語った。
これを受け、かつて大阪大学コミュニケーションデザインセンターで教鞭を執っていた平田さんは、「『コミュニケーションデザイン』という言葉には大きく二つ意味がある」とし、「例えば、椅子の配置や壁の色などを科学的に分析し、どうやったらコミュニケーションが取りやすくなるかという視点と、もう一つは広告業界で使われる『どのような媒体で訴求するか』という視点」とした。
さらに平田さんは、「(平田さんが学長を務める)芸術文化観光専門職大学はまさにそういうことを学ぶ大学ですから、近いところでお仕事をされていたのですね」と、四戸さんと意気投合。演劇などの舞台コンテンツは、アニメに比べてマス発信が困難なのか、という話題のもと意見を交わす場面もあった。