「断トツ」。実はうっかり“間違って”使ってしまう言葉です。
スポーツアナウンサーが「断トツの1位、優勝!」などと叫んでいるのを聞いたことはありませんか? これは正しい表現ではありません。
こちらはどうでしょうか。
「断トツの最下位からの逆転!」
これは明らかな誤用です。ご存知の方も多いかと思いますが、この「断トツ」という言葉は2つの言葉をまとめて表現しています。
『広辞苑 第七版』(岩波書店)には……
「(『断然トップ』の略)他を大きく引き離して首位にある意の俗語」とあります。
そう、「断然トップ」を略した言葉です。いつ頃から使われるようになったのかは定かではありませんが、調べてみるとヒントが見つかりました。
以前もご紹介した『悩ましい国語辞典』(時事通信社)に、この「断トツ」が載っていました。そこには、『日本国語大辞典』(小学館)の用例として、1963(昭和38)年に発表された石原慎太郎さんの『死のヨットレース脱出記』 に出ているとあり、「ほぼその時代に生まれた語なのかもしれない」としたうえで、1974(昭和49)年の『三省堂国語辞典 第二版』に初めて「断トツ」という言葉が登録されたと書かれています。