「ヤクルト1000」が爆発的にヒットしていて、入手は困難になっています。これまでのヤクルトとの違いは、「乳酸菌 シロタ株が1本に1000億個入っている」、とのこと。世にはヤクルトの他にも「カルピス」や「R-1」など乳酸菌を含む飲料が販売されていますが……当たり前のように耳にする「乳酸菌」とはそもそも何なのでしょうか? 腸内細菌に詳しい、一般社団法人バイオトラスト代表理事・加賀夏子さんに聞きました。
加賀さんによると、「『乳酸菌』という特定の菌がいるわけではありません」とのこと。てっきり、乳酸菌という菌がいて、そこから「○○株」といった具合に分類されるのだと思っていたのですが、どうやら違うようです。
加賀さんによると、数ある菌の中でも種類を問わず「腸内で乳酸を産み出す働きをする菌」のことを総じて「乳酸菌」と呼ぶのだそうです。ちなみに、「シロタ株」はヤクルトの創業者である代田稔(しろた・みのる)氏が発見し、さらに「強化培養」されたもので、これも立派な乳酸菌の一種です。
現在のところ、乳酸菌は400種類ほどあることが分かっていて、ヒトの腸の中にも元々存在しています。乳酸菌は食べたもの(炭水化物や糖類)を餌にして、腸内で乳酸を産み出すことで、腸内の悪い菌を減らすなど「腸の機能を活性化」。「整腸作用免疫細胞を活性化」することで排便状況を改善するなど、腸に有益な働きをしてくれるそうです。「何となく、体に良さそう」と感じる乳酸菌ですが、それに間違いはなさそうです。
また、加賀さんは「乳酸菌は、ヒトや動物の腸内や乳、植物、海洋環境など自然界に多くあるので、そこから発見され、いろいろな働きが研究されるため、今後も多くの乳酸菌が発見されるでしょう」と話します。
それから、企業が乳酸菌について表現する時に使う「生きて腸に届く」という謳い文句が気になります。そもそもこれは珍しいことなのでしょうか? 加賀さんは、「ほとんどの乳酸菌は腸には届かず、胃酸で死んでしまいます。万一到達したとしてもほんのわずかです」といいます。
「そもそも、口から入った菌が、簡単に腸に届いたら、怖いですよね。悪い菌が腸に入ると、腹痛や感染症の原因になります。ですから、胃酸には、外から入ってきた菌を殺す働きがあるのです。ただ、乳酸菌に関しては、生きた菌だけが良いというのではなく、死んだ菌も、腸内細菌の餌になるなど、腸にとても良いことがわかっています」(加賀さん)。「生きて」腸に届かなくとも有効なケースがあるようです。
最後に、こうした乳酸菌への関心の高まりについて、腸内環境の専門家はどう見ているのでしょうか。