子役から脱皮の精鋭・芦田愛菜とベテラン・宮本信子、11年ぶりの再共演となった『メタモルフォーゼの縁側』。今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。
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原作は鶴谷香央理作のコミック。2017年の連載開始以来口コミで人気が上昇し、『このマンガがすごい!2019オンナ編第1位』『文化庁メディア芸術祭 マンガ部門新人賞』などに輝き、このたび初めて単行本になった。
17歳の女子高校生の佐山うらら(芦田愛菜)。皆のようにキラキラした学生生活を送っているわけじゃない。75歳の市野井雪(宮本信子)は、夫に先立たれ、娘は外国暮らし。これといった趣味もなく、書道教室の先生をしながら一軒家で一人で暮らしている。
そんな、何の接点もないはずの二人の出会いは、とある本屋だった。
アルバイトでレジにいたうららの元に、1冊の本を持ってきた雪。表紙がとってもきれいだったから…と、買おうとしている雪にうららはビックリ! それがBL(ボーイズラブ)コミックだったから。
男性同士の恋愛を描いた“BL”は、胸がときめくシチュエーションや奥の深い物語も多く、いつの間にかどっぷりハマってしまったという人も多いジャンル。しかし、昔ながらの価値観や固定概念に囚われて、LGBTQの潮流を受け入れかねている高齢者の世代には、ファンはなかなかいないはず……。
もちろん、最初はその内容に度肝を抜かれながらも、やがてBLの世界にはまっていく雪。ファンになったBL作家のコメダ優(古川琴音)の新刊を求めて本屋に通ううち、親しくなっていく雪とうらら。