韓国と北朝鮮が国連加盟を目指して1990年、ソマリアの首都モガディシュで競い合っていました。現地で内戦に巻き込まれた両国の大使館員たちの実話を映画化した『モガディシュ 脱出までの14日間』が、7月1日(金)に公開されます。
1990年、アフリカの東端にある国、ソマリアでの出来事です。
ソウルオリンピックを1988年に開催した韓国ですが、当時まだ国連に加盟していませんでした。国連へ入るのを目指し、韓国政府は投票権を多く持つアフリカでロビー活動を熱心に展開していました。
ソマリアの首都モガディシュにある韓国大使館では、ハン大使が現地の政府に取り入って投票を促そうとしています。ソマリアのバーレ大統領との会談へ向かう途中、大使館の車が銃撃を受け、大統領へ根回しするため用意したプレゼントを奪われます。
韓国大使館の車を襲った現地の若者たちは、北朝鮮大使館が仕込んだのでした。
翌日、ハン大使は大使館ナンバー2のカン参事官とともにホテルへ行き、ソマリアの外務大臣と面会します。
大臣はハン大使に「私は誰よりも韓国政府が好きです」と前置きした上で、次のように提案します。
大臣「韓国は研修生の支援に予算を使うべきではありませんか? 私の息子が2人、アメリカで産業技術を勉強中です。研修生支援として奨学金を2万5000ドルずつ、工面しませんか」
ハン大使「奨学金として5万ドルを息子2人に?」
大臣「国連で演説するのは大統領ですが、演説の文面を作るのは私の担当です」
ワイロを要求するソマリアの外務大臣に、ハン大使はあきれます。
このホテルに北朝鮮大使館のリム大使とテ参事官が来ているのが見えました。北朝鮮も国連加盟のため積極的にロビー活動しているようです。
韓国のハン大使は車が襲撃されたことに抗議しようと、北朝鮮のリム大使に近づきます。
韓国・ハン大使「フェアプレーをしましょう。妨害工作をしないでください」
北朝鮮・リム大使「そっちこそ、うちが武器を密売しているとウソを広めているではないですか」
ハン大使「ぬれぎぬを着せないでください」
リム大使「我々は南よりも20年も早くアフリカと関係を築いてきた。仲を引き裂こうとしても無駄だ」
そのとき、ホテルの近くで銃声が鳴り響きます。ソマリア政権に不満を持つ反乱軍の暴動が起こったのでした。
反乱軍と政府軍との内戦は激化し、反乱軍は「腐敗した政権に協力する外国は出て行け」と大使館に火炎瓶を投げ込みます。
電話などの通信手段が断たれ、韓国大使館も北朝鮮大使館も完全に孤立します。モガディシュの街は戦争状態になり、空港が閉鎖されて国外へ逃げる道がなくなります。電気と水道が止まり、石油がなくなります。