今も国内外で活動を続ける作家たちの「若き日」の試みなど、1980年代の関西のアートシーンを彩った作品を紹介する「関西の80年代」展が、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開かれている。2022年8月21日(日)まで。
兵庫県立美術館の前身である兵庫県立近代美術館では、かつて「アート・ナウ」というシリーズ展を開催。その年に目覚ましい活躍を見せた作家を紹介し、関西アート・シーンの今を伝えようとする名物展覧会だった。「現代美術は西高東低」とも言われた1980年代。会場には、関西ならではの、36作家による50点余りの作品が並ぶ。
1960年代から70年代は禁欲的な傾向が見られた。80年代になると一転し、カラフルでバラエティに富み、大きな作品が増え、作家自身が自分の表現したいものを前面に出す時代になった。当時はバブル景気とポストモダン、華やかで恵まれた状況にも思われるが、作家たちは何をどう作って生きていくのか悩んでいた。その末にたどり着いた作品はエネルギーにあふれており、結果的に現代まで色褪せることなく引き継がれている。
80年代半ばになると、会場となった画廊全体を埋め尽くすような「インスタレーション」を発表する作家も増えた。展示空間を前提とした表現のため現存する作品は限られるが、いくつかを再現した。
田嶋悦子の「Hip Island」(1987年)。「アート・ナウ‘87」に出品された陶器のパーツを再構成した。30年以上が経過しても鮮やかだ。
緑の毛糸で編んだ「物体」が縦横無尽に空間に広がる、中原浩大の「ビリジアンアダプター+コウダイノモルフォⅡ」(1989年)。見えない先に何があるのか、見ている側の想像力を駆り立てられる。
兵庫県立美術館の江上ゆか学芸員は「現代アートはわかりにくいという人も多いが、違う世界への入り口だと思ってほしい。80年代を経験した人はただ懐かしいというだけではなく今だから見えてくるものがあるだろうし、80年代を知らない人はネットもないアナログの時代の表現は新鮮にうつるのではないか」と話す。
兵庫県立美術館開館20周年「関西の80年代」。開館時間は午前10時~午後6時。月曜休館。ただし7月18日(月・祝)は開館、翌19日(火)休館。料金は、一般1,500円(障がい者350円)、70歳以上750円、大学生1,100円(障がい者250円)。なお、12日(火)~18日(月・祝)は「ひょうごプレミアム芸術デー」開催に伴い、本展の観覧料が無料になる。
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◆兵庫県立美術館開館20周年「関西の80年代」
会場:兵庫県立美術館
会期:2022年6月18日(土)~8月21日(日)
開館時間:10:00~18:00
休館日:月曜 ただし7月18日(月・祝)は開館、翌19日(火)休館
【兵庫県立美術館 公式サイト】