ロシアの侵攻が続くウクライナの国立バレエ団「キエフ・バレエ」が、7月15日から8月9日にかけ、大阪、京都や東京など全国16都市で「キエフ・バレエ・ガラ2022」公演を行う。ロシアの侵攻後、まとまった人数での国外公演は日本が最初になるという。
ウクライナは、世界有数のバレエ大国である。同国を代表する「キエフ・バレエ」は、1867年に創設されたウクライナ国立歌劇場を拠点とする名門。レオニード・サラファーノフ、デニス・マトビエンコ、アリーナ・コジョカルら、国際的なスターダンサーを数多く輩出してきた。群舞の美しさにも定評がある。
十数年前から定期的に来日公演を続けており、日本でもなじみ深いカンパニーだ。今回参加予定のダンサーは約30人で、侵攻後、まとまった数での国外公演は日本が最初だという。
しかし紛争の激化によって、今夏の日本公演も、一時は開催が危ぶまれた。
招へい元の光藍社(東京都新宿区)によると、2月下旬、ロシア軍の侵攻によって同歌劇場は閉鎖を余儀なくされ、バレエ団も活動休止に追い込まれた。一部の団員は、短期間の避難のつもりで必要最低限の荷物を作り、周辺の欧州各国へ脱出した。一方、家庭の事情などでキーウに残ったメンバーや、ウクライナ軍に入隊した男性ダンサーもいたそう。避難した団員らは不安な思いを抱えながらも、身を寄せた国のバレエ関係者の助けを得るなどして練習を重ねた。
そんな中で同社が各ダンサーと連絡を取ったところ、全員から「今の状況下でもなんとかして日本に行き、多くの観客に私たちのパフォーマンスを見てほしい」との回答があったという。彼らの熱い思いを受け、同社は公演実現へと舵を切った。
所属するダンサーたちの強い希望と関係者の協力によって開催の運びとなった来日公演は、15日のベイシア文化ホール(群馬県民会館)を皮切りに、大阪、京都、東京など全国16都市で幕が開く。
今回の演目は「ジゼル」、「ラ・シルフィード」、「海賊」など名作のハイライト集。ウクライナの民族衣装で大ジャンプを披露する「ゴパック」、世界的プリマで同バレエの芸術監督でもあるエレーナ・フィリピエワがドラマチックに舞う「瀕死の白鳥」など見どころ満載だ。出演はほかにプリンシパルのアンナ・ムロムツェワ、ニキータ・スハルコフら。