鹿児島県立奄美高等学校の、あまりにも斬新な新年度の生徒募集ポスターがSNSで話題です。向かい風にあおられて髪が乱れようとも動じない表情の生徒たちが、なんともユーモラスで目を引きます。生徒たちに混ざって写っているモフモフしたキャラクターは、奄美大島に伝わる妖怪、または木の精霊ともいわれている「ケンムン」です。
2022年8月1日にリリースしたばかりの「逆風」ポスターですが、キャッチコピーにも奄美大島の方言が取り入れられ、遊び心が詰まっています。「逆風っち、ぬぅだりょん?」は、「逆風って、なんですか?」という意味で、「私たちはそんなこと気にしていませんよ」というニュアンスで制作されたそう。
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「逆風」っちなんですか?
コロナ?少子化?経済低迷?ライバル校の人気上昇中?
なんだか最近、向かい風強めではありますが、
私たちはいつも「風」の強い、この“奄美”で学んできました。
いつの時代も風当たりが強いことはきっとたくさんあるけれど、
大丈夫。私たちは“奄美”出身。
逆風なんて、なんのその。
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SNSでは、「面白いデザイン!」「県立高校で、このオシャレなポスターはすごい!」「CDジャケットみたいで最高!」「多様性への理解がある学校だね、きっと」「めっちゃ好きw」と反響を呼びました。
ポスター制作の背景について、奄美高等学校の商業科の教員である広報担当の飛松先生に聞きました。
——ポスターデザインのコンセプトを教えてください。
企画を依頼したエビス製作室のMITSUI RYUTAさんが企画・立案してくださったコンセプトがこちらになります。
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何かと向かい風をうけている社会や状況の中、その「風」・「逆風」自体をデザインテーマに出来ないかと考えました。海に囲まれた奄美では、強風の日が多くあります。特に、それを実感するのは日々徒歩や自転車で通学する児童や生徒たちであるのと同時に、悪天候の中でも長年通学してきた生徒たちは急に変わる天候にも動じず強く育っていきます。
「向かい風が多い社会」や「奄美は風が強い」は、幅広い多くの人が共感を抱けるテーマであると思います。ポスターの卒業アルバムの写真では、向かい風が吹き荒れ髪や制服が乱れているにも関わらず、生徒や先生たちが一切動じず凛とした表情をして写っています。
「奄美(奄美高校という意味で)出身の生徒たちは逆風に強い」という直接的な印象と、「逆風」が持つマイナスイメージを逆手にとって攻めの姿勢を取る奄美高校の独自性と柔軟性を、島内外の生徒や保護者にPR。強風をびくともしない生徒たちの表情、かっこいいんだけどどこか笑える、インパクト強めなデザインです。
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予想を超えすぎる提案をいただいたので最初は驚きましたが、さすが地元島民ならではの視点とプロならではの角度からのアプローチで、MITSUIさんなくしてはこのポスターは誕生しませんでした。
――今回のようなポスターは、初めて制作されたのでしょうか?