【放送のことば(2)】「市立と私立」 夏の甲子園中継でも直面 「市立船橋」は「いちふな」か? | ラジトピ ラジオ関西トピックス

【放送のことば(2)】「市立と私立」 夏の甲子園中継でも直面 「市立船橋」は「いちふな」か?

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  放送では多くの言葉を使います。自由に話しているように見えたり聞こえたりするかもしれませんが、じつはいろいろな決まりがあります。そうした、知っているようで知らない「放送のことば」を、シリーズでご紹介します。

 2回目の今回は「市立と私立」です。

 いま、兵庫県西宮市にある阪神甲子園球場では、夏の高校野球(第104回全国高校野球選手権大会)が行われています。そんななか、千葉代表の「市立船橋高校」の読み方がネット上で話題になりました。

 中継では「しりつふなばし」と言われていたのに対し、地元の人を中心に「『いちりつ』では?」との声が上がったのです。複数の千葉出身者に確認したところ、やはり“いちりつふなばし”を略して「『いちふな』と呼んでいる」とのことでした。

 さて、「市立」の読み方にルールはあるのでしょうか。

 原則として「市立」は「しりつ」と読みます。しかし、ややこしいのが「私立」の存在です。こちらも読み方は「しりつ」が原則です。しかし、聴くことで情報を得るラジオ放送で、一連の文章の中に市立と私立の両方が出てくると、音ではどちらが「市立」でどちらが「私立」なのか判断がつきません。

 そのため、使い分けを行います。

「原則は『市立(しりつ)』だが、『私立』も出てくるので『いちりつ』としよう」、あるいは「私立の方を『わたくしりつ』と読もう」などと考えて使い分けるのです。読み分けは、その時の文章によります。基本原則は大事ですが、それで意味が通じなくなってしまうのは本末転倒。放送現場では、よりわかりやすくお伝えするために、日々、こうした工夫を施しています。

 今回の「市立船橋」と同じような例は、私の勤務する放送局がある兵庫県でも過去に存在しました。

 2016年の夏、第98回高校野球兵庫大会の決勝。市立尼崎と明石商業(明石市立)の対戦でした。実況担当だった私は、「しりつあまがさき」と呼ぶか「いちりつあまがさき」とするかで悩みました。地元では「いちあま」の愛称で親しまれていたため、取材陣も総じて「いちあま」と呼んでいました。しかし、正確には「しりつあまがさき」。どちらが良いか学校に確認、当時の監督にも事前に聞いた上で、出した答えは「いちりつ」でした。

 学校側の当時の話は「正式には『しりつ』ですが、普段は『いちりつ』と言われているので、放送ではお任せします」。それを受けて、社内で検討。私たちは地元・兵庫のローカル放送局ということもあり、地元の言い方に準じた表現をしよう……という結論に達しました。試合は市立尼崎が、公立同士の対決を制し優勝しました。

 これが難しいのは、全国に放送を展開している放送局です。

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