【放送のことば(3)】「カラオケ」「スマホ」「新型コロナ」「東京地検特捜部」…メディアでの『略語』事情 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

【放送のことば(3)】「カラオケ」「スマホ」「新型コロナ」「東京地検特捜部」…メディアでの『略語』事情

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 放送では多くの言葉を使います。自由に話しているように見えたり聞こえたりするかもしれませんが、そこにはいろいろな決まりがあります。なかでも「ニュース」の言葉は、いろいろな決まりごとに沿ってかなり慎重に扱っています。シリーズでお伝えしている「放送のことば」。第3回の今回は、「コンビニ」「スマホ」などの略語です。

 ご存知の通り、放送は厳格な時間管理のもとで行われています。したがって、決められた時間のなかで、できるだけ多くの情報を伝えるべく工夫しています。そこで悩ましいのが長い言葉(名詞)です。いくつか例をあげましょう。

「コンビニ」「スマホ」「デジカメ」「スーパー」「ラジカセ」「パソコン」「パトカー」「カラオケ」「電卓」「総理大臣」「東京地検特捜部」「日銀」「〇〇県警」「甲子園球場」など…たくさんあります。これらはすべて短くされた言葉です。

「コンビニ」は「コンビニエンスストア」、「スマホ」は「スマートフォン(スマートホン)」、「スーパー」は「スーパーマーケット」、「電卓」は「卓上(型)電子計算機」、「東京地検特捜部」は「東京地方検察庁特別捜査部」、「日銀」は「日本銀行」、「〇〇県警」は「〇〇県警察本部です。

 これらは、今では市民権を得て、省略して使ってもほとんどの方が意味を理解しています。しかし世に出た当初は、説明や正式名称を言わないと意味をわかってもらえませんでした。「カラオケ=空(から)のオーケストラ」、「パソコン=パーソナルコンピューター」もそう。結果として略称の方がなじんだ例もあり、「SP」が「セキュリティポリス」ということを、最近になって知ったという方がいるかもしれません。

「新型コロナウイルス」もそうでした。当初は何だかよくわからないと感じたこの言葉も、最近では略して「新型コロナ」あるいは「コロナ」という表現を使うニュース・放送局が増えています。毎日これだけメディアや会話に登場し、多くの人の関心が高いものであれば、かなり短い期間で省略形のみの使用とすることも可能です。

 しかし、そこそこ認知されているものの、市民権を得たとまで言えない場合は、そのニュース原稿や記事に初めて出てきたときは正式名称で言い、2回目以降は省略することになります。たとえば「コンビニエンスストア」なら、最初は「コンビニエンスストア」、2回目以降は「コンビニ」という具合です。さらに、まだ一般にまったく浸透していない場合は、最後まで「コンビニエンスストア」で通すことになります。聞く方も、わずらわしく思う人が出てきます。

「新型コロナ」のように比較的早く浸透した言葉もあれば、その反対も……。登場から20年以上たったにもかかわらず、あまり短くされていない言葉(名称)があります。省庁再編でいくつかの中央官庁がひとつになって誕生した“役所の名称”です。「文部科学省」「国土交通省」「厚生労働省」などがそれです。

 当初これらの名前を聞いた時、「長いな~。これ毎回言うの?」と部内で話をしました。あれから21年がたちましたが、未だに、かつての「通産省(=通商産業省)」のように、ニュースなどの放送で略して伝えることはあまりありません。「文部科学省」なら、ニュース原稿の最初に出てきた時は「文部科学省の~」とし、後は略することは増えてきていますが、最初から最後まで「文科省(もんかしょう)」と言う形は、ニュースではほとんど見られません。

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