赤土部のメカニズム 「丹波焼の世界season6」兵庫陶芸美術館【リモート・ミュージアム・トーク(2)】 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

赤土部のメカニズム 「丹波焼の世界season6」兵庫陶芸美術館【リモート・ミュージアム・トーク(2)】

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 兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)では、2023年2月26日(日)まで、テーマ展「丹波焼の世界season6」が開かれている。同館学芸員の萩原英子さんによるこの「リモート・ミュージアム・トーク」では2回にわたって今展の見どころを紹介する。第2回は「赤土部のメカニズム」。

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 兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)では、テーマ展「丹波焼の世界season6」を2023年2月26日(日)まで開催しています。日本六古窯の一つに数えられ、800年以上の歴史を持つ丹波焼(兵庫県丹波篠山市など)は、平安時代末期に東海地方の常滑焼(愛知県)の窯業技術を取り入れて操業を開始しました。本展は、丹波焼の優品からその歴史をたどります。また、会期中、一部展示替えをおこないます。やきものは、焼成の仕方や窯の中の雰囲気によってさまざまな表情をみせます。後期展示では、「赤土部」の作品をご紹介します。

兵庫陶芸美術館(同館提供)
兵庫陶芸美術館(同館提供)

 平安時代末期の開窯以降、400年続いた丹波焼も近世を迎え、窖窯(あながま)から登窯(のぼりがま)へとその姿を変えます。ほぼ軌を一にして「葉茶壺」、そして、いわゆる「赤土部」が誕生します。

 近世丹波の幕開けを飾る赤土部は、容器の水漏れを防ぐために器面に土部を塗ったものが赤く発色したものです。土部を塗土する技法は、17世紀前半に備前(岡山県)から伝わり、丹波では、赤く発色したものを赤土部と呼んでいます。

 赤土部を用いた器面装飾には、土部を単味で塗土したもの、土部の上から灰釉(かいゆう)を重ね掛けしたもの、器面に葉を貼り付けてその上から土部を塗土したもの、さらに灰釉を施釉したものなど、さまざまなバリエーションがあります。

 後期展示では、赤土部が生み出す器肌の多彩な表情とともに、再現された「現代の赤土部」をご覧いただきます。今もなお、人々を魅了してやまない赤土部の魅力をお楽しみください。

赤土部灰釉四耳壺 江戸時代前期(17世紀) 兵庫陶芸美術館(田中寬コレクション)兵庫県指定重要有形文化財
赤土部灰釉四耳壺 江戸時代前期(17世紀) 兵庫陶芸美術館(田中寬コレクション)兵庫県指定重要有形文化財

 器肌に塗った土部は、鮮赤色に発色し、肩に四つ付く耳と耳の間から流し掛けした灰釉は、黒色に発色しています。四耳壺は、江戸時代の俳諧論書『毛吹草』(けふきぐさ)に丹波の名物と謳われた「葉茶壺」です。焼成の際に窯の中で灰が器肌に降りかかり、窯変がみごとに現れています。器肌に現れた赤、黒、窯変の色彩が見所となっています。

赤土部壺 江戸時代前期(17世紀) 兵庫陶芸美術館(田中寬コレクション)兵庫県指定重要有形文化財
赤土部壺 江戸時代前期(17世紀) 兵庫陶芸美術館(田中寬コレクション)兵庫県指定重要有形文化財

 赤土部が多彩な変化を見せています。窯の中の火の強弱によって、緋色や紫がかった褐色、黒色など、器肌の発色にグラデーションが生じています。上方から灰が激しく降り掛かり、火表(ひおもて)に黄色の窯変が現れています。赤土部のメカニズムは、火表と火裏(ひうら)で器肌にさまざまな表情を見せます。(兵庫陶芸美術館 学芸員・萩原英子)

◆「丹波焼の世界season6」
後期展示:8月23日(火)~2023年2月26日(日)


◆兵庫陶芸美術館
兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4
電話 079-597-3961
開館時間 10:00~18:00
※入館はいずれも閉館の30分前まで
休館日 月曜(月曜が祝休日の場合は翌平日)、年末年始(12月31日、1月1日)
入館料 同時開催中の特別展の料金に含まれます。
(特別展開催期間中はテーマ展のみの料金でご覧いただくことはできません。)



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