神戸港・新港第一防波堤(神戸市中央区)に9月4日未明、外国船などの大型船舶を港に誘導する「パイロットボート」が衝突し、船長と水先案内人計5人が死傷した事故で、死亡した船長(52)の体内からアルコール分が検出されたことが17日までに、ボートを運航する内海交通(神戸市中央区)への取材でわかった。
司法解剖でアルコール分は血中から検出されるなどして判明、13日午後に神戸海上保安部から伝えられたという。
パイロットボート(長さ約15メートル、総トン数18トン)が衝突したのは神戸・メリケンパークから南へ約3キロの防波堤(高さ約4メートル)。ボートに乗っていたのはいずれも神戸市居住の男性5人。このうち水先案内人(71)と船長(52)が船内で全身を強く打ち死亡。50~71歳の乗組員や案内人3人が骨盤骨折などの重傷を負った。
神戸海上保安部によると、ボートの船首部分が激しく損傷しており、かなり強い衝撃だったとみられ、スピードを落とさずに航行していた可能性があるという。
■パイロットボート運航会社、当面は神戸港での運航見合わせ
内海交通では、安全管理規程で乗組員が出勤した時に呼気検査を記録するなどのアルコール検査体制を規定し、▼アルコール検査器の配置、▼アルコール検査実施の有無について報告書を送付させていた。
内海交通の代理人弁護士によると、今回の事故を受けて改めて社内調査したところ、現在の体制では、船員による検査の有無や結果をリアルタイムに把握できないなどの不備があったという。
こうしたことから内海交通では、全船員に対する実態調査やアルコール検査体制の再構築などを進め、安全な運航ができる体制が整うまで神戸港でのパイロットボートの運航を見合わせ、当面は別会社による代替運航に切り替えるという。
内海交通は「パイロットボートの運航という、社会的影響の大きい業務を担っており、今回の事態を重く受け止めている。事故の原因究明に向け、関係当局の調査に全面的に協力する」とコメントした。