日本一の酒どころ・灘五郷の1つ、西宮郷の一角にある白鹿記念酒造博物館(兵庫県西宮市鞍掛町・運営/辰馬本家酒造)に24日、青々とした新たな「酒林(さかばやし)」がつるされた。酒林は新酒の季節の訪れを知らせる。
すっきりとした辛口で芳醇な「男酒」と呼ばれる灘の酒は、西宮神社付近に湧く六甲山系の良質な伏流水「宮水」がひと役を買う。24日は辰馬本家酒造の令和4酒造年度(※ R4BY)の新酒を初めてしぼる「初揚げ」の日でもある。
杉玉とも呼ばれる酒林は新酒の季節の訪れを知らせる。 杉の葉を束ねて球状にまとめたもので、江戸時代に酒屋の看板として軒先に吊るされる。
新酒が出来た事を知らせ、青々とした杉の葉が徐々に茶色になるにつれ、酒が熟成したことを表す。
杉は酒の神様をまつる大神(おおみわ)神社(三輪明神・奈良県桜井市)のご神木。 神の坐す杉とされていた。 酒林には「志るしの杉玉」と記した木札が付いている。「志るし」とは、神が霊験をあらわす示現(じげん)のことで、酒造りの神・大物主大神(おおものぬしのかみ・大国主神とも)が鎮座する山の杉をいただいたことの証(あかし)とされる。
それだけに、酒林は酒蔵、酒屋にとって神聖なもの。また、杉材は伝統的な酒づくりの道具にも多く使われ、香りが移った樽酒の風味はその恩恵といえる。
今年の酒林は、直径約80センチ、重さ約80キロ。辰馬本家酒造では、杉の葉の採取、酒林の製作、付け替えまで全て社員の手で行う。10月12日、兵庫県丹波市山南町で採取された杉の葉を少し乾燥させ、竹を編んで作った丸い籠に杉の葉を差し込んで球体を整える。杜氏や蔵人から代々受け継がれた方法で、酒造りの合間を利用しながら約10日間かけて完成させた。