バラバラにまとまる具体 解散から50年の展覧会「すべて未知の世界へ」 国立国際美術館で【統合】編 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

バラバラにまとまる具体 解散から50年の展覧会「すべて未知の世界へ」 国立国際美術館で【統合】編

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 高度成長期に活動した前衛的アーティスト集団で、近年、世界的にも注目を集める「具体美術協会」(1954~72年、通称、具体)。解散から50年の節目を迎え、大阪中之島美術館(大阪市北区)と国立国際美術館(同)の2館が展覧会「すべて未知の世界へ­GUTAI 分化と統合」を共催している。1月9日(月・祝)まで。

大阪中之島美術館
大阪中之島美術館

 大阪中之島美術館と道路を一本隔てた南側に位置する国立国際美術館では、具体の【統合】をテーマに展示を構成している。「バラバラにまとまっている」と逆説的に表現される、具体の共有理念について考える材料となる多彩な作品76点が並ぶ。

【統合】第1章のタイトル「握手の仕方」は、具体のリーダーであった吉原治良(1905~1972年)の「具体の美術は、精神と物質が対立したまま握手している状態」との思想から引用されている。同館学芸課の福元崇志主任研究員は「通常、絵描きは絵具をうまくコントロールすることを目指す。言い換えると、画家の精神が、絵具という素材を支配することで、絵画は成り立つとされてきた。吉原は、その上下関係を突き崩すことによって、描くことの自由を求めた」と説明する。

「握手の仕方」は、3種類にカテゴライズされ、おおむね3つの部屋に分けられている。1つ目は、異物を混入させた絵画群。マッチ棒、ガラス片、砂などを用い、画家のコントロールの及ばない画面を作ることで、精神(画家)と物質(素材)の間に緊張関係を生み出そうとしたのだという。

 2つ目はあえて不器用にしか描けないシチュエーションを用意して取り組んだもの。白髪一雄(1924~2008年)が足で豪快にペイントした「天雄星 豹子頭」、インクや墨汁を紙の上に乗せ、そろばんやクシ、バイブレーターなどを用いてダイナミックに広げるなどした、鷲見康夫(1925~2015年)の「作品」、フェルトペンを仕込んだラジコンカーを操作し、不規則な線を生み出した、金山明(1924~2006年)の「March」シリーズなど。

 3つ目の方法は、「反復」。その代名詞的な作品、正延正俊(1911~1995年)の「作品64-3」には、黄土色や褐色、深緑色などの地の上を、無数の記号のような丸や点々がうねるように描かれている。正延は同作について「僕自身の生命感動の直接的な表現」と言及していたという。

 第2章「空っぽの中身」で目を引くのは、吉原治良の「無題」。吉原が1965年以降に手掛けた円をモチーフとした作品の1つで、油彩で横長の円が1つ描かれている。吉原は書道に触発されて円に行き着いたが、そこに意味を見い出してはいなかったという。同館の福元主任研究員によると、吉原は円を題材にしていることについて「画面にマルを描いておけば落ち着きの良い構図になってくる。後はそのマルをどう描くか、色を塗り重ねていくかに専念すれば良いから」と話していたという。「吉原にとって、絵は意味を帯びた記号ではなく、描くことに専念するための方便だった」(同主任研究員)。

 最後の章「絵画とは限らない」の一室には、白色の作品が集まる。具体の美術には、赤をはじめとするビビッドな色が多く見られるが、活動後半になってくると色を使わない作品が増えていったという。具体最若手の1人、今井祝雄(1946年~)も白いレリーフ状の造形作品「白のセレモニーHOLES#3」を制作した。「白はあらゆるものを受け入れ、包み込む色。控えめではあるが現実の空間との関係を構築しようとしている」と、福元主任研究員は今井の言葉を借りながら解説する。

 2012年、東京の国立新美術館で、さらに翌年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で展覧会が開かれるなど、近年、国内外で再評価の機運がある具体。福元主任研究員は、「(具体は)美術という、もともと西洋に由来する制度を受け入れつつ、組み替え、作るという行為について問い続けた。絵画らしい絵画からの自由、意味からの自由、フォーマットからの自由を果たした後の現実空間で、作ることと生きることを接続させるような作品を生み出していた点がその大きな特徴と言えるでしょう」と話している。


◆大阪中之島美術館 国立国際美術館 共同企画 「すべて未知の世界へ­­­ー­GUTAI 分化と統合」
会場:大阪中之島美術館(〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-1)5階展示室
   国立国際美術館(〒530-0005 大阪市北区中之島4-2-55)地下2階展示室
会期:2022年10月22日(土)~2023年1月9日(月・祝)
開館時間:10:00~17:00 
    ※国立国際美術館は金・土曜20:00まで(入場は閉場の30分前まで)
休館日:月曜(ただし、1月9日[月・祝]は両館開館/1月2日[月・休]は大阪中之島美術館のみ開館)
   ※大阪中之島美術館は12月31日(土)、1月1日(日・祝)休館
   ※国立国際美術館は12月28日(水)~1月3日(火)休館
観覧料(税込):2館共通券2,500円
       大阪中之島美術館 一般1,400円、大学生1,100円
       国立国際美術館 一般1,200円、大学生700円
       2館とも高校生以下・18歳未満無料(要証明)  
問い合わせ:大阪中之島美術館06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
      国立国際美術館 06-6447-4680(代)

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