2022年11月8日、皆既月食が起こる。日本では去年11月19日以来の月食、皆既月食としては去年5月以来で、見える方向、高度、皆既の継続時間の長さ、すべて好条件。天気が味方してくれたら日本全国で観測が可能だ。
月食は、太陽がつくる地球の影に月が入る現象で、月全体が地球の影に入ることを「皆既月食」という。
この日の月の出は、神戸16時52分、明石16時53分。東の低い空にある月は18時8分ごろ、欠け始める。部分月食の始まりだ。皆既食が始まるのは19時16分ごろ、食の最大は19時59分ごろで、20時42分ごろに皆既食が終わる。皆既の状態はおよそ86分続く。(前回、2021年5月26日の皆既月食では、皆既の状態は14.5分しかなかった。)この間、月は全く見えなくなるのではなく、「赤銅色(しゃくどういろ)」と呼ばれる赤黒い色に見える。ただこの色や明るさは地球の大気の環境によって変わり、過去には月がほとんど見えなくなったこともある。今回はどのような「皆既」となるのかも楽しみだ。皆既の状態が終わると、徐々に月は地球の影から抜けて21時49分ごろに部分食が終わる。明るい満月に戻るのはさらに1時間半後になる。
ただ、今回はこれで終わりではない! この月食の真っ最中に天王星食が起こる。月が天王星を隠す現象で、「月食中の月に天王星が隠される」のは珍しい。小笠原諸島を除く日本のほとんどの場所で見ることができる。ただ天王星は5.6等級と暗いため、観測には双眼鏡や望遠鏡が必要になる。天王星は普段の満月の状態だと月の明るさに負けてしまうが、この日は「皆既月食」。しかも皆既の時間に天王星食が起こるので、見つけやすいのではないかという。
明石市立天文科学館によると、「解説書によっては違う表現になっているかもしれないが、『見た目』では、明石では20時30分ごろ、天王星は月の『6時くらいの位置』から入り、21時20分ごろ、月の『3時くらいの位置』から出現する」。同時に2つの食が起こるのはとても珍しく、双眼鏡や望遠鏡を用意して、観測を楽しみたい。
明石市立天文科学館の井上毅館長は「月食は刻々と変化する面白い天文現象。しかも今回は天王星食というとても珍しい現象も同時に起こります。夜の早い時間帯なので子どもにも見やすい。天気もよさそう。こんなに素晴らしい条件の皆既月食は一生に一回でしょう。ぜひ多くの人に見てほしいです。」と話す。
明石市立天文科学館ではこの2つの食をライブ配信する予定。また兵庫県立大学西はりま天文台や伊丹市立こども文化科学館、加古川市立少年自然の家などでも、皆既月食の観望会などを予定している。