『僧侶兼シンガーソングライター』という異例の経歴を持つ加藤煕章(キショウ)さんが、歌手デビューを果たしました。ファーストシングル『遺言』は上北健さんプロデュースのもと、11月9日に先行配信リリースを開始。デビューのきっかけは、テレビ番組『歌唱力日本一決定戦【歌唱王】2021』の準優勝です。
決勝戦で歌ったamazarashiの『僕が死のうと思ったのは』のカバーをYoutubeチャンネル「『加藤煕章の『僧侶歌う』」にアップしたところ、再生回数75万を超え、コメント欄では「鳥肌が立って涙が出た」「心揺さぶられる歌声」「魂の歌声が心に沁みる」と絶賛されました。
現在31歳となる加藤さんは、北海道北部に位置する浜頓別町のお寺で僧侶として働きながら、シンガーソングライターとして町おこしをしてきました。白鳥が集まるクッチャロ湖が有名な浜頓別町ですが、人口はたったの3000人強。
そんな小さな田舎町で、僧侶と音楽活動という二足のわらじを履いて頑張っている加藤さんは、どういう存在なのでしょうか。以下、加藤さんに、歌手デビューに至るまでの経歴を聞きました。
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もともとは東京の駒澤大学に通いながら、路上ライブを主とした音楽活動を始めました。実はそのころは寺を継ぐ気持ちが全くなかったのですが、僧侶の資格くらいは取っておこう…という気持ちで、大学卒業後、福井県の永平寺へ、2年間の修行に行きました。
修行生活は、毎日3時半に起きて、座禅、朝のおつとめ、朝ごはんを食べながら座禅、掃除…という、皆さんがよくイメージされる姿と大きくは変わらないと思います。携帯電話は持っていけないため、父と手紙のやり取りをしていました。修行を終えると、浦島太郎気分で、スマートフォンの進化に驚きました(笑)。
修行を終えてからは再び上京し、ライブハウス等でのアルバイトをしながら、音楽活動を続けていました。音楽業界での僧侶は本当に珍しいので、音楽仲間にはいつも興味深そうに、修行のことなどを聞かれることが多かったです。
徐々にファンの方が増えてきて、1年後には100名程を集めてライブ活動を行うほどになっていました。しかし100名集めたら、次は200名、300名……と規模を大きくすることを目標にしたとしても、その先が見えないな、何かやり方を変えないと、と感じていました。