ペットと一緒に幸福に生きていくために、私たちができることは何か……。高齢の飼い主とペット、動物愛護などをテーマとしたシンポジウム「高齢者とペット問題を考える」(NPO法人C.O.N主催)が、このほど尼崎市立中央北生涯学習プラザで開かれ、約200人が聴講した。
C.O.Nは、兵庫県尼崎市で「高齢者とペットの安心プロジェクト」を立ち上げ、ペット飼育が難しくなった高齢者の相談に乗ったり、ペット支援を通じた高齢者の見守り活動などを行ったりしている民間団体。
基調講演では、動物愛護の啓発活動に取り組んでいるタレントの杉本彩さんが登壇し、ペット業界の問題点などを語った。
杉本さんは、悪質なペット事業者について具体的に紹介。ペット販売店で売れ残った犬や猫を「保護犬」「保護猫」として里親希望者に渡し、店での販売価格に近い譲渡金を支払わせたうえ、ペットフードの定期購入まで勧めるビジネスもあるといい、「善良な動物愛護団体を見極め、慎重に動物を譲り受けてほしい」と訴えた。
高齢者のペット問題の実例としては、孤独死した高齢女性の家で多頭飼育されていた猫が約1カ月放置されていたケースも。行政側はそのことを把握していたにもかかわらず、「親族に所有権があるから」とそのままにしていたといい、杉本さんは行政の対応に疑問を投げ掛けた。
またコロナ禍によってペット需要が高まり、過剰な繁殖や無責任な飼育放棄が増えている現状を挙げ、「飼育できなくなっても、動物愛護センターに引き取ってもらえるとは限らず、殺処分になる可能性がある。(動物愛護の)民間団体の負担が果てしなく大きくなっている」と指摘。「日本は誰でも動物をペットとして手に入れられる社会だが、そろそろ大量生産、大量販売を見直すべきではないか」と強調した。
シンポジウムには、フォトエッセイストの児玉小枝さんも参加。自身の撮影した動物の写真を投影しながら、「高齢の犬猫は譲渡対象から外されがちで、高齢というだけで殺処分される場合がある」「自分が病気になった時のことを想像できずに飼育を始める高齢者がいる。最後まで飼える老犬を選んでほしい」など、取材で聞いた声やエピソードを話した。