ドラァグクイーンたちの“ひみつ”をめぐる、ハートフル・ヒューマン・コメディー。映画『ひみつのなっちゃん。』が全国ロードショー公開中です。
「はい、もしもし。お久しぶりね。なっちゃんがどうしたの?」
ドラァグクイーンのバージンの携帯に、ドラァグクイーン仲間のモリリンから電話がかかってきました。なっちゃんが死んだ、と言うのです。バージンが病院へ駆けつけるとモリリンが泣いていて、霊安室になっちゃんが安置されていました。
なっちゃんは、オネエとして新宿二丁目で食事処を営んでいました。モリリンはそのお店で働いていましたが、なっちゃんは自分の本名や故郷などの素性を明かさない人だったためどうすればいいか分からず、ドラァグクイーンとしてなっちゃんを古くから知るバージンに連絡したのです。
葬儀業者が来て2人に尋ねます。
業者「ご親族の方で?」
バージン「いえいえ。私たちはその、知り合いというか後輩のようなもので」
業者「あ、そうでしたか。学校のご校友の方で」
バージン「そういうのではなく」
業者「と言いますと?」
バージン「えーと、説明が難しいんですけど、師弟関係的な、ボス的なそんな感じで……」
業者「なるほど。おふたりのボスでいらっしゃる故人様のお住まい、ご出身をお伺いしたいのですが……」
ところがバージンもなっちゃんのプライベートを全く知りませんでした。なっちゃんはオネエとしての生活と実家や家族のことを完全に切り分けていたのでした。
バージンは、ドラァグクイーン仲間でタレント活動をしているズブ子へなっちゃんが亡くなったことを伝え、3人でなんとかしてなっちゃんの自宅を調べます。
なっちゃんは家族にオネエであることをカミングアウトしていなかったことが分かり、3人はなっちゃんがひとり暮らしをしていたアパートに忍び込んで証拠を隠そうとします。
ところがここへなっちゃんの母親が訪ねてきます。
「あのう、並木わたるの母ですが」