通貨処理機の最大手グローリー株式会社(兵庫県姫路市)は、昨年7月に資本業務提携したソフトウェア開発会社「エコナビスタ」(東京都千代田区)と共同で、人の転倒検知システムを開発、1月10日に発売した。
高齢者施設では入居者の事故の6割が転倒により起きており、介護スタッフの居室見回りが24時間欠かせないことから、労働負担が人手不足とあいまって大きくなっている。しかし、従来の可視光線や波長の短いミリ波を使ったセンサー・カメラなどで転倒を検知するシステムは、かがんだり寝そべったりする動作まで転倒と認識してしまう誤報の多さやプライバシー侵害の問題などがあり、施設への導入がなかなか進んでいないという現状がある。
そこで両社が開発した転倒検知システム「ミライアイ」では、入居者にモザイクをかけたうえで、骨格のみの姿勢を折線で映し出すことでプライバシーを保護。また、赤外線3次元センサーを用いることで、室内の明るさにかかわらず入居者の姿勢を骨格から正確にとらえることに成功し、ほとんど誤報せずに居室全体を見守ることができるようになった。
さらに、転倒につながる姿勢をAIが機械学習し、転倒の予兆を検知した場合にも介護スタッフのパソコンやスマートフォンに通知する機能も付加。介護スタッフは通知の前後映像を確認して訪室を判断できるので、転倒の未然防止につなげられるという。
グローリーは、銀行の現金処理機やスーパーの釣銭機などが主力事業だが、近年は通貨を見分けるAI画像認識技術をさまざまな業態へ応用させ、印鑑や手書き文字の認識、顔認証、産業用ロボットなど新領域分野を開拓している。 今後両社は、同システムで蓄積するビッグデータを活用した新たなサービスや製品を模索、さらなる介護・医療分野での見守りに貢献していく考えだ。
(取材・文=播磨時報社)