島根県松江市の玉造温泉にある「地酒と器のひとしずく」は、2019年、オーナーの江角直紀さんが弱冠21歳でオープンした地酒の専門店。島根県の物産で専門店がしたかったという江角さんは、19歳の時に今のお店のアイデアを思いついた。ワインやビールも考えたというが、島根県は水もきれいで、発祥の地でもある日本酒を扱う方がおもしろいだろうと地酒専門店にした。もともと、玉造温泉が好きで温泉街で何かしたいという思いもあり、町おこしとしてはじめた側面もあるという。
店内では、島根県の地酒にこだわり、県内約30あるうち、13~14の蔵元の地酒を販売している。扱っている銘柄は、たくさんありすぎて江角さんも把握できないそうだ。立ち飲みスペースもあるので、温泉街のスナック感覚でお酒を楽しむことができる。7割ほどが温泉客とのことで、試飲をしておみやげに地酒を買う人も多い。地酒のほかにも、県内の窯元で作った地元作家の酒器や湯飲み、茶碗、コーヒーカップなどの食器も販売している。
高校卒業後にいきなりお店をオープンした江角さん。お酒の雑誌に、岡山県で地酒販売をされている女性の紹介記事を見て連絡を取り、開業へのノウハウを教えてもらったという。店舗は、温泉街にある元スナック兼喫茶店の空き物件を改修。建築関係の仕事をしている姉に内装や外観のデザインを頼んだそうだ。
島根県には、日本酒に関係した神社が複数ある。それほど、地元に日本酒が根付いており誇りが込められている。ミネラル豊富で理想の酒米を作るのに最適な水と、伝統を受け継ぎ研鑽を重ねる職人によって作られる地酒。「アミノ酸も多く含まれているので、肌や体にもおいしい飲み物であるのも魅力の一つ」と江角さんは言う。
最近は県外の常連客も増え、それがやりがいにもなっている。地元はもちろん、全国各地からの来店客との会話も楽しんでいる江角さんは、同店が町おこしの拠点になることを目指している。