高齢化が進む日本。財産管理や成年後見、介護トラブル、年金、消費者被害、遺言など、高齢者の抱える法律問題は多岐にわたります。さらに、最近はひとり暮らしをする高齢者も増えており、周囲からの支援は欠かせません。高齢者が抱える問題について、SIN法律労務事務所の藤田翔一弁護士に聞きました。
――高齢者、障がい者支援に積極的に取り組んでいるとのことですが、具体的にどのような活動をされているのでしょうか。
【藤田弁護士】 現在は兵庫県弁護士会の高齢者・障害者総合支援センター運営委員会、通称「たんぽぽ」の委員長として活動しています。一般法律相談とは別に、高齢者・障がい者の法的な問題について、専門的な法律相談や支援活動を行っています。たとえば、財産管理や成年後見制度の利用、虐待への対応や精神科病院からの退院請求など、内容はさまざまです。
――高齢者や障がい者など、社会的弱者に対する虐待事件に関する相談も多いそうですね。
【藤田弁護士】 虐待は大きくニュースに取り上げられることもありますが、報道されているのは氷山の一角で、実際はもっと多いです。また、相談できずにいる方も多いので、私たちが把握している以上に虐待を受けている人は多いと思われます。
保育園などで虐待を受けた場合は親が子を見ているため比較的気づきやすく、対策を取ることもできます。しかし、施設で生活している高齢者や障がい者は虐待を受けていることを相談できなかったり、そもそも虐待を受けていることに気づいていない場合もあります。特に、コロナ禍により家族に面会できない期間が長くなり、家族が気づけないことも多々あります。
――どのような対策が必要でしょうか。
【藤田弁護士】 虐待に気づいた人がすぐに通報することが大切です。高齢者虐待を防ぐために制定された「高齢者虐待防止法」では、虐待を発見した場合、重大な危険が生じるかどうかに関わらず市町村への通報が義務づけられていますので、介護サービス従事者はもちろん、在宅介護を行う家族や近所の方など、高齢者虐待を発見した場合はすぐに通報してください。
――ほかにも、年を重ねていくことでさまざまな問題に直面するかと思うのですが、財産の管理など法律に絡んだ問題は特に重要ですよね。どのような備えをしておくことが大切なのでしょうか。
【藤田弁護士】 まずは、何かあったときに相談できる人がいるというのがとても大切です。昨今、「おひとりさま」という言葉が浸透してきましたが、超高齢化社会の日本ではひとりで老いを迎えることは珍しくありません。また、お子さんがいらっしゃる場合でもなかなか相談しづらいということもあるかと思います。そういった場合は、令和3年より始まった「ホームロイヤー制度」を利用していただきたいと思います。