首相秘書官(更迭)による性的少数者(※LGBTQ)や同性婚カップルへの差別発言に対し、関西でもさまざまな声が聞かれた。
岸田文雄首相の側近、荒井勝喜秘書官が3日夜、「オフレコ」(オフ・ザ・レコード / 録音・録画をせず、取材源を明かさない)を前提とした記者団の取材で、「(同性婚カップルが)隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」、また同性婚の法制化について「(首相)秘書官はみんな嫌だと言っている。認めたら、日本を捨てる人も出てくる」などとコメントした。
岸田首相が1日の衆院予算委員会で、同性婚をめぐり「家族観や価値観、社会が変わる課題だ」と答弁したことについて(記者団の)質問に答えたものだった。
岸田首相は「政府の方針と相いれず、言語道断」と述べ、荒井秘書官は4日、更迭された。首相を支える秘書官のうち、首相のスピーチライターでもあり、広報的な立場だった側近の差別発言で更迭されるのは極めて異例で、慢性的に内閣支持率の低迷が続いている岸田内閣にとって大きな痛手となっている。
■国民と政権の意識に”ずれ”
神戸市中央区の30代・会社員(男性)は「これ(秘書官の発言)が政権としての本音なのかと思うと悲しい。首相秘書官である以前に、人として許せない発言だと思う。学生時代の友人が、同性カップルとして(東京都内で)パートナーシップの宣誓をした。かつては差別に苦しんだ時期もあったようだが、今は幸せに暮らしている。世代の違いで認識が異なるかも知れないが、国民レベルでは、LGBTQを受け入れる意識が高まっていると思う。政府の中枢を担う人物として世界の動きに逆行する発言だ」と話した。
■何を根拠に“社会が変わる”のか
大阪府高槻市の60代・会社役員(女性)は「何を根拠に『同性婚が法制化すると日本を捨てる人が出てくる』と言えるのか。建前だけで“多様性”と言っているだけ。そもそも(差別発言の)発端は『価値観や社会が変わってしまう』という岸田首相の発言。この言葉に多様性を認めようとする本気度の低さが垣間見える」と不信感を抱いた。そして「5月には岸田首相の出身地・広島でG7サミットもある。唯一、同性婚やLGBTQなどへの差別禁止を制度化していない国が日本だけとは残念だ。野党も政府として(LGBTQなどへの「理解増進法」を整備する)スタンスを決めるべき」と述べた。
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LGBTQなどへの理解増進法案を巡っては、性的少数者の課題解決を目指す超党派の議員連盟が策定を主導していた。そして、2021年の通常国会で与野党が法案内容で合意したが、自民党内で一部の保守派が強く異論を唱えたことから了承せず、法案は国会に提出されていない。
■同じ秘書官、息子はセーフなのか
兵庫県加古川市の40代・自営業(男性)は、首相の外遊に同行した長男・翔太郎秘書官がパリやロンドンで公用車を使用した観光地訪問や閣僚への土産購入を「公務」としたことにも触れ、「差別発言とは内容が全く異なるとはいえ、“我が息子”なら不問なのか。最終的に(荒井氏の)更迭はやむを得ないと思うが、急過ぎたのではないか。トカゲのしっぽ切りで、話題をそらそうとしたのかも知れない」と不信感を抱いた。
■すべての取材、本音と建前の使い分けか
大阪市城東区の30代・大学職員(女性)は、差別発言について「度が過ぎる。あってはならない言動」との意見を述べたうえで、「『オフレコ』という形式で、個人的な意見を話した内容が報じられたことの是非も指摘されているが、オフレコであったとしても首相秘書官という公的な立場で、発言内容を考えるべきだったのではないか。それぞれの思いや考え方があるのはわかるが、あまりにも発言内容が直球で、直截(ちょくせつ / あからさまの意)過ぎたと思う。こうなると、すべてのメディア取材に対して、本音と建前の使い分けがまかり通ってしまい、『何でも言っていい』ことになる。結果として、報じたことを責められないのではないか」と「オフレコ」のあり方に疑問を呈した。