山陰地方限定の完熟いちご 島根・安来市の農園「大森ファーム」が栽培 生産者「不向きな環境を逆手に」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

山陰地方限定の完熟いちご 島根・安来市の農園「大森ファーム」が栽培 生産者「不向きな環境を逆手に」

LINEで送る

この記事の写真を見る(3枚)

 島根県安来市は、山陰一かつ県内最大のいちごの産地である。特に山陰地方のいちごは、甘くておいしいと地元の人々にも親しまれている。そんな同市で農園「大森ファーム」を運営する大森雄介さんは、2016年に神奈川県横浜市から安来市へと移住してきた。

 横浜では、IT関係の会社で技術者をするかたわら、趣味で家庭菜園をしていた大森さん。ある時、作った野菜を親戚のお店で販売したところ、お客さんが喜んでくれたので「農家もいいな」と思い、それがきっかけで、20年ほどのサラリーマン生活から農業へと転職した。技術者なので、ひとつの会社で長く働いていたわけではなく、農業への転職に抵抗はなかったのだそう。

 農業をはじめるにあたり、大森さんの妻が隣接する鳥取県米子市出身だったことから、まずは米子市周辺で就農できる場所を探した。すると、安来市がいちご農家の就農支援をしており、助成金や移住場所などのバックアップも充実していたことが、安来市への移住の決め手になったという。

広々としたビニールハウス内の様子

 そして、2年間の農業研修を経て、2018年にビニールハウス4棟でいちご農園を開業し、現在は8棟で運営。「大森ファーム」では、今年のメインである「よつぼし」という品種のほか、「ベリーポップ・すず」「ベリーポップ・はるひ」が栽培されている。

 本来、山陰地方はいちごの産地として向いていないそうだ。それには、クリスマスから3月にわたるいちごの需要期に日照時間が短いという理由があり、長い時間をかけて育てなければならない。それが逆に、出荷直前まで完熟させることにつながり、味が濃くてとても甘いいちごに育つ。完熟だと輸送中にいたんでしまうため、地元での消費がメインとなり全国に流通しない。遠くまで運ばないからこそ可能な栽培法というわけだ。まさに、山陰地方限定の完熟いちごと言える。

不向きな環境を逆手にとって誕生した濃くて甘い味わいのいちご

 大森さんのこだわりは、農薬を減らし、健全で健康ないちごを育てること。たとえば、プランターの位置を高くして栽培する、ビニールハウス内を土足厳禁にするなど、できるだけ物理的に害虫や雑菌が入らないように努めている。また、最新の栽培技術も導入。それらの取り組みにより、島根県の定めた生産工程管理基準に基づいて生産されていることを認証する「美味(おい)しまね認証」も取得した。

 大森さんは、「いちごの収穫には、苗から1年半ほどの栽培期間がかかる。その間に、病気や害虫を克服しないといけない。しかし、お客さんが食べて、おいしいと言ってくれることで、その苦労も楽しさに変わる」と話す。

プランターの位置を高くするなどの害虫対策も

「大森ファーム」では、3月から6月第一週まで、時間内食べ放題のいちご狩りを楽しめる。高設プランター式なので、汚れず立ったままでいちごを狩れるうえ、車イスでの利用にも対応している。


島根県安来市の農園「大森ファーム」公式サイト

LINEで送る

関連記事