神戸港沖で2022年9月、パイロットボートが防波堤に衝突し、5人が死傷した事故で、酒気帯び状態で操船し事故を起こしたなどとして、神戸海上保安部は7日、死亡した男性船長(当時52歳)を業務上過失致死傷と業務上過失往来危険の各容疑で、容疑者死亡のまま書類送検した。
また、パイロットボートの運航会社「内海(ないかい)交通」(神戸市中央区)についても、安全管理規定に定められた船長の飲酒検査を怠ったなどとして、海上運送法(安全管理規程)違反容疑で書類送検した。
船長は9月4日未明、船の誘導役を務める水先案内人らを沖へ運ぶ途中、神戸港・新港第一防波堤(神戸市中央区)に衝突した。船長と水先案内人(当時71歳)が船内で全身を強く打ち死亡。50~70代の乗組員や案内人3人が骨盤骨折などの重傷を負った。
司法解剖で船長の体内からは基準値の7倍に相当するアルコールが検出された。(道路交通法で酒気帯び運転の基準値となる呼気中アルコール濃度は1リットル当たり0.15ミリグラム)捜査関係者によると、当時は(夜間であっても)見通しは良く、平均的な操船技術があれば、前方を見誤ることはあり得ないという。こうしたことから、防波堤への衝突原因として、酒気帯び状態での操船で、船長が周囲への警戒を怠った可能性が高いとみられる。
内海交通の内部調査では、事故前日(22年9月3日)の午後6時半以降に、死亡した船長と他の3人の計4人が、待機所で飲酒していたという。いずれも翌4日の午前2時以降の出港予定があることを認識していた。さらに、9人の乗組員が、業務開始前に飲酒したことが確認され、飲酒の常態化が明らかになった。同社の安全管理規定では、出航前8時間の飲酒を禁じており、出勤時と出港直前のアルコール検査が定められている。乗組員らは「新型コロナウイルス禍が始まった2020年ごろから業務量が減ったため、飲酒機会が増えた」と説明していたという。