Jリーグの若手の登竜門といえる大会、「JリーグYBCルヴァンカップ」が今年も開幕。ヴィッセル神戸の18歳のルーキー2人が、グループステージの初戦でいきなりデビューを飾ったが、試合は0-2で敗戦。ほろ苦い初陣となった。
今シーズンからは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により凍結されていた「ルヴァンカップにおけるU-21選手の先発出場義務ルール」が再導入され、若手の成長の場としての位置付けがさらに鮮明になった、同大会。Cグループに属するヴィッセルは、J1リーグ戦から中3日での試合、その2日後にもリーグ戦を控えていることもあって、3月8日のグループステージ第1節、ホームでの名古屋グランパス戦では、直近のJ1第3節ガンバ大阪戦から先発を10人変更。ヴィッセル神戸U-18からトップチームに昇格したDF寺阪尚悟選手がセンターバックの一角で先発するなど、若手や出場機会に恵まれていない選手たちがスターティングメンバーに名を連ねた。また、控えにも東福岡高校から加わったMF浦十藏選手や、トップ昇格組の一人・FW冨永虹七選手といった新顔が入った。
試合では序盤こそ出足の鋭さを発揮して攻勢をかけたヴィッセルだが、経験豊富な選手が並ぶ名古屋の壁を崩せずにいると、前後半ともに、カウンターからそれぞれ失点。ヴィッセルDF酒井高徳選手を兄に持つ名古屋のFW酒井宣福選手に2得点を献上した。
この日がデビュー戦となったブラジル人GKフェリぺ・メギオラーロ選手の再三の好守で踏ん張りつつ、なんとか1点を返そうと反撃したクリムゾンレッドだったが、途中出場のFW川崎修平(※「崎」=たつさき)選手のシュートがGKランゲラック選手のファインセーブにはばまれるなど、最後まで1点が遠く、0-2で敗れた。
先発フル出場を果たした寺阪選手は、プロ2年目・19歳のDF尾崎優成選手や、J1でも主軸で活躍するDF山川哲史選手といったアカデミーの先輩と、それぞれセンターバックでコンビを形成。前半は緊張からか硬さが目立った背番号37だが、後半は相手の前線のプレスをかわしてボールを的確につないだり、守備でも粘り強く対応したりするなど、徐々に持ち味を出す場面も見せた。今回は失点に関わったことで悔しさも人一倍あると思われるが、次代のヴィッセルを担う左利きの長身センターバックは、期待の逸材の一人。負傷離脱者が続出する守備陣において、今後も出番が訪れることが想定されるだけに、さらなる奮起が望まれる。
一方の浦選手は、先発していた大卒ルーキーMF泉柊椰選手に代わって75分(後半30分)に投入され、右MFでプレーしたが、自慢のスピードやドリブルをほとんど出すことはできず。それでも、アディショナルタイムには態勢を崩しながら前線の川崎選手に好パス。決定機を演出した。
試合後、取材エリアで初めてのメディア対応に臨んだ、浦選手。冒頭、「プロデビュー戦で、途中から入る形でしたが、途中から流れを変えられる選手にならないと、これから先、プロでは通用しないなと感じたので、悔しさが残る試合でした」と試合を振り返った背番号38は、チャンスを導いたシーンについても「あのワンプレーしかなかったので……それを何回もできる選手に、なります!」と自戒。「監督からは『何か爪痕を残してこい』と言われましたが、あのパスも狙っていたものではないですし……。チャンスというところは少なかったですが、ボールの受け方など、しっかり見つめ直さないといけない」と、課題を直視した18歳だが、「たくさんの観客がいるなかで、そこで結果を残さないと、プロとして生き残っていけない。しっかり結果を残せる選手になりたい」「自分の武器であるスピードやドリブル突破などで、チームに勢いを与えられる選手になって、もっと試合に絡んでいきたい」と前を向いた。
プロでの第一歩を踏み出せた実感についても、「悔しいので……まだ全然です」と述べていた浦選手。ただし、まだJの舞台に上がったばかり。アンドレス・イニエスタ選手や大迫勇也選手をはじめ、タレントぞろいの攻撃陣のなかで、トレーニングの場から日々貴重な経験を積む若きスピードスターにとっても、これが始まりのとき。「インタビューにも慣れないといけないですね……」という、初々しさも魅力の18歳には、いま、伸びしろしかない。未来を切り開くためにも、プロの原点となったこの一戦で得た思いを忘れてほしくはないものだ。(ラジオ関西『GOGO!ヴィッセル神戸』)