3月22日付けで兵庫県警本部長に着任した前・内閣官房審議官の村井紀之(としゆき)警視監(55)が同日、神戸市中央区の兵庫県警本部で会見し、「肩ひじを張らず、職員の話に耳を傾けたい」と自然体で接する姿勢を示した。
村井本部長は兵庫県伊丹市出身。東京大法学部卒業後、1990(平成2)年に警察庁に入庁し、高知県警警備第一課長や福岡県警捜査第二課長、大阪府警生活安全部長、青森県警本部長、警察庁では生活安全局生活環境課理事官や交通局交通指導課長などを歴任している。
村井本部長は「かつての警察庁人事では、地元での赴任を避ける慣行があったため、内示を受けた時は心から“ありがたい”と思った。生まれ育った故郷に恩返しができる」と抱負を語った。
これまでに印象に残った事件として、内閣サイバーセキュリティーセンター在籍時の2015(平成27)年に発覚した、不正アクセスによる日本年金機構の情報流出を挙げた。
この時、警察庁や警視庁と協力して実態解明に当たり、「世間に与えたインパクトが大きく、サイバー攻撃の恐ろしさを思い知った事件だった」と振り返った。
兵庫県警では、相次ぐ特殊詐欺対策として、情報提供制度の新設や、SNSで「闇バイト」を募る投稿に対してAI(人工知能)を使ってサイバーパトロールをしている。
村井本部長は、深刻な特殊詐欺被害から目をそらさず、これらの施策を踏襲するとしたうえで「手口や発生状況踏まえ、適切な警戒情報を発出しなければ後手に回ることになる。例えて言うならば、天気予報をチェックするのと同じ。こうした情報が届きにくい方々に、家族やコミュニティを通した情報共有が必要」と述べた。
そして暴力団対策については、「兵庫県には(対立関係にある)六代目山口組、神戸山口組、これら”2つの山口組”の本部、拠点があるというだけで責務が大きい。それに加えて分裂や抗争があり、県民のみなさんにとって不安な状況だ。これまで直接、暴力団対策に関わったことはないが、経験がない分、フレッシュな視点で、対応策を見つけることができれば」と意欲を見せた。
このほか、交通死亡事故の対策にも力を入れ、1人でも多くの県民の命を救うべく対策を立てたいとも述べた。
兵庫での交通事故による死亡者数は、2020年に過去最少の110人まで減少したが、2021年に114人、2022年は120人と増加傾向にある。
学生時代から趣味で作曲活動をしていた村井本部長。内閣官房審議官時代は、音楽の趣味を生かして作詞作曲した曲を、青森県に赴任した縁で自身のYouTubeチャンネル「青森応援AOチャンネル」で公開していた。
現状は予定していないと述べたが、「故郷の兵庫での赴任ということもあり、創作意欲が刺激されれば、そうしたこともあるかも知れない」と話した。
好きな言葉は「過去は変えられないが、未来は変えられる」。誰でも失敗やミスはある。そこから何が得られるのかを知り、立ち直れる組織でありたいと語った。