鉄鋼大手・神戸製鋼所(本社・神戸市中央区)が敷地内で増設した石炭火力発電所2基について、住民ら37人が稼働中止を求めた民事訴訟で、住民側の一部が、請求を棄却した神戸地裁判決を不服として控訴した。4月1日付。
この2基は神戸発電所3号機(2022年2月運転開始)と4号機(2023年2月開始)。出力は計130万キロワットで関西電力に電力を供給している。
3月20日の神戸地裁判決は、一般論として石炭火力発電所が排出するCO2が、気候変動に悪影響を与えるなどの危険性は認めたものの、「地球温暖化の被害による原告らの不安は、不確定な将来の危険に対する不安であり、現時点で法的保護の対象となるべき深刻な不安につながる危険性はない」と指摘、住民の生命、身体に具体的な危険は認められないとした。そして神戸製鋼側の取り組みで、大気汚染物質の排出量の低減が見込まれると指摘した。
原告らは、世界では気候変動危機に対応するため、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの普及促進など、「脱炭素」の動きが加速しているが、日本では大気汚染物質とCO2の排出が多い石炭火力発電所の建設が、神戸のみならず全国で進められており、このまま温暖化が進んだ場合、さらなる被害が起き得ること懸念している。
一審判決を受け、原告らは「日本での気候変動に対する危機感の欠如は深刻で、気候変動時代の新たな人権侵害への対応姿勢を欠いている」と述べた。
そして「石炭火力発電所の問題点を、引き続き広く国際社会に訴えていく」としている。
原告弁護団は、石炭を燃焼して排出されるCO2(二酸化炭素)について、新設発電所から年間約692万トンと算出。日本で排出されている二酸化炭素の約4割が火力発電所から出され、特に石炭火力は天然ガスの2倍ものCO2を排出すると指摘している。
神戸製鋼が増設した石炭火力発電所は、明らかにCO2の巨大排出源であり、神戸市灘区の住宅地から約400メートルしか離れておらず、窒素酸化物などの環境汚染物質の放出量が増え、健康被害により平穏に生活する権利が侵害されると主張していた。