「コスパ」(コストパフォーマンス=費用対効果)や「タイパ」(タイムパフォーマンス=時間対効果)という言葉が流行して久しい昨今、次は、スペースパフォーマンス(空間対効果)を略した「スペパ」という言葉が流行しつつあるという。
住宅金融支援機構の調査によると、マンションの住宅面積の全国平均は、2015年度以降7年連続で縮小し、ここ5年間でおよそ3.8平方メートル小さくなっている。コロナ禍を経て在宅ワークに取り組む人が増え、日用品などが次々に値上げされて買いだめの需要も増加するなか、限られたスペースをいかに有効に使用するかは重要な課題になり、「スペパ」志向の新商品も続々登場している。
今年4月、国内清涼飲料ブランドで 5年連続の年間販売数量1位を誇る「サントリー天然水」では、2L(リットル)ペットボトルにおいて、飲み終わった後の空容器を約6分の1のサイズにできる“小さく、たたみやすい”新容器を開発したと発表した。
新容器は、従来からの持ちやすく注ぎやすい形状や容器としての強度はそのままに、持ち手となる胴部を平行四辺形の形状にすることで、つぶすのではなく、さらにコンパクトに“たたむ”ことができるという。これにより、飲み終えた後に自宅で保管する際の省スペース化が図れるだけでなく、結果的に、ごみに出す際の回収の頻度も少なく済み、環境への配慮にもつながることが見込まれている。
一方、家具と一体化して、一見ではその存在が分からないという家電製品“ステルス家電”も話題になっている。
2022年4月、日常生活に溶け込んだヘルスケアに関する商品やサービスの開発・提供を行うissin株式会社が、体重計測ができるバスマット「スマートバスマット」を発売した。バスマットと体重計の役割を兼任し、肌ざわりの良い珪藻土(けいそうど)入り素材のプレートに乗るだけで、スマートフォンのアプリを通して自動的に体重の増減やBMIの変化を記録することができる製品だという。
同製品はマットの部分が洗濯機で丸洗いできるため、いつでも清潔に使用することが可能で、バスマットとしての性能にも配慮されている。特に男性からは「体重計をわざわざ出して測るという動作が面倒」という意見も多いなか、バスマットと体重計を一体化させることで、健康維持の基本である体重の管理を意識せずに習慣付けできるのも、特長の1つといえよう。
また、雛(ひな)人形や五月人形といった季節行事の節句飾りでも、コンパクトなサイズのものが新たな定番になりつつある。
大阪・松屋町で雛人形などを販売する「増村人形店」は、およそ3年前から丸い枠の中に小ぶりの雛人形がセットされた「ちいさなお雛様」シリーズを販売している。伝統的な造形美にこだわりながら壁にも掛けられ、奥行き12センチから16センチ程度のコンパクトなデザインで、オフシーズンには写真立てや花を飾る棚としても使用できる。マンションなどに住む若い世代の家族に特に好評で、これまで雛人形や五月人形などを飾る際にネックになっていたスペースの確保にとらわれることなく、節句の伝統行事を楽しむことができるという。
今後、ますます耳にする機会が増えそうな言葉「スペパ」。時代を反映したこの三文字は、新しい時代のキーワードになりそうだ。
(取材・文=村川千晶/放送作家)