近年、再び注目を集めているといわれる昭和歌謡・昭和ポップス。ではカラオケではいったいどのような楽曲が、どれくらい歌われているのでしょうか? カラオケ再生回数ランキングから見えてくる昭和歌謡ブームの実像について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライターでTikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 この数年、若者の間で昭和歌謡がブームと言われていて、私たちの番組(ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』)も誕生したわけですが、カラオケではどれくらい昭和の曲が歌われているか、知っていますか?
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 YouTubeやTikTokで大きな反響が出ているのは知っているのですが、カラオケではどうなんでしょうね? 私は松田聖子さん歌いますし、友だちのなかにも中森明菜さんを歌う子がいるので、やっぱりたくさん歌われているんじゃないかなと思うのですが……。
【中将】 僕も気になってDAM(第一興商)がホームページ上で公開している「2022年 DAMカラオケ年間ランキング」に目を通してみたのですが……全然ランキングに入っていなかったんです。
【橋本】 あれ? 昭和歌謡ブームってガセだったんですか?(笑)
【中将】 さて、どうなんでしょう……(笑)。2022年の年間ランキング上位を見てみると、1位「ドライフラワー」(優里)、2位「シンデレラボーイ」(Saucy Dog)、3位「マリーゴールド」(あいみょん)、4位「水平線」(buck number)、5位「猫」(DISH//)と、ここ数年の間にリリースされた曲ばかりです。
【橋本】 確かに、そのあたりはみんな歌いますからね……。
【中将】 もしかするとコロナ禍で高齢者がカラオケに行かなかった影響かもと思って「2019年年間ランキング」にも目を通したのですが、ほとんど変わりない感じでした。つまり、昭和歌謡は最近の曲に比べるとカラオケであまり歌われていないということですね。
【橋本】 見たり聴いたりはされているのに、あまり歌われないんですね。サビくらいは知っているけど全部はわからない……みたいな人が多いのでしょうか。
【中将】 そうなんでしょうね。ただ、ランキング100位以内に入っている昭和歌謡も4曲だけありました。今回はその4曲を紹介しつつ、カラオケで歌われる昭和歌謡の傾向について考えていきましょう。まずは90位にランクインした岩崎良美さんの「タッチ」(1985)。
【橋本】 私もカラオケでよく歌いますが『タッチ』でやっと90位なんですね! この曲はもともとがアニメソングだし、最近の声優さんたちもカバーしていて若い人にもよく知られていると思いますね。
【中将】 楽曲自体の魅力も大きいですが、やっぱりアニメの力はすごいですね。作品とともに曲もいつまでも残っていくんですね。
お次はランキング84位、石川さゆりさんの「天城越え」(1986)。
【橋本】 これは演歌の中でも特に人気ですよね。私も歌いますし、カラオケスナックなどでは定番の曲です。
【中将】 石川さゆりさんと言えば『NHK紅白歌合戦』で延々と「天城越え」と「津軽海峡冬景色」(1977)を歌い続けていることがSNSで話題になったりしました。椎名林檎さんとコラボしたり、サントリーのCMソングだった「ウイスキーが、お好きでしょ」(1991)が再注目されたり、演歌歌手としては比較的ポップなイメージを保ち続けている方ですね。
【橋本】 年々、視聴率が下がっているとは言われますが、やっぱり紅白の威力はすごいと思います。若い人でも見てる人は見てますしね。