統一地方選・後半戦の市長選と市議選が16日に告示された。全国的に注目されるのが、兵庫県明石市長選。 元加西市長の中川暢三氏(67)、明石市議の林健太氏(40)と丸谷聡子氏(59)が立候補を届け出た(4月16日・午前9時30分現在)。
現職市長の泉房穂氏が暴言問題をきっかけに2022年10月、任期満了での政界引退を断言して政治団体「明石市民の会」を立ち上げ、市議と市長後継候補を擁立する方針を示した。このうち市議候補5人を同年12月に発表したが、後継とする市長候補の発表は、告示まで3週間と迫る2023年3月25日。このころ、一部で「泉氏が引退を撤回して再出馬する可能性も」との憶測が広がっていた。
中川氏は、行政のトップが政党や政治団体の影響を受けることに疑問を呈している。これまでの泉市政12年間の総括が必要だとしているが、泉市政下で実現した子ども政策での医療費、給食費など“5つの無料化”は継続すると話す。加えて、市内の小中学校と高校の一貫教育やオーガニック給食を提案。市民サービスでは、全国初の「パーソナル行政」と銘打ち、AI(人工知能)やデジタル技術の活用を打ち出す。
林氏は、地元・明石市選出の西村康稔経済産業相が自民党(明石支部)の独自候補として擁立。無所属での出馬だが、泉氏と市議会で対立してきた自民、公明が推薦する。自らを「子育て奮闘中の責任世代」と称し、明石市の子育て施策を継続させるとしている。また明石市の10年連続人口増加を評価するが、そこに頼る市政運営ではいけないと危惧する。日本の人口が減少傾向にある中で、中長期的な経済成長戦略を示して、子育て、介護世帯への減税で市民の生活を支援しつつ、明石市を次のステージに進めると訴える。
丸谷氏は「100%、無所属市民派」と言い切る。泉氏が3月21日に後継として出馬を打診。無所属で出馬。市議会で是々非々で意見を交わしていた丸谷氏は、“ 泉派 ”ではなかったが、泉氏いわく「(泉氏自身の)路線を引き継いでもらいつつ、トラブルなく職員とも議会とも丁寧にやってもらえる候補だ」というのが決め手になったという。泉氏のトップダウン型ではなく、ボトムアップ方式の市政運営で、泉市政が進めた子育て支援策の継続のほか、地域経済活性化のための「市民全員サポート券」の発行に加え、タウンミーティングの毎月開催などを公約に挙げる。
4月9日に投開票された兵庫県議選・明石市選挙区では、泉氏が「明石市民の会」として擁立した新人候補(無所属)が2位に約2倍の差をつけてトップ当選し、「明石市民の会」の人気の高さを示した。
前回(2019年4月)の明石市議選では林氏がトップ当選、丸谷氏が約170票差で3位での当選だった。泉氏をめぐっては、職員への暴言問題による辞任に伴う同年3月の出直し選挙で、8万795票を獲得して圧勝した(その後、任期満了に伴う同年4月の市長選は泉氏が無投票当選)。