第一生命が全国の小・中・高校生を対象に行った「大人になったらなりたいもの」のアンケート結果によると、全ての世代の男子・女子のトップ10に「医師」が入っています。憧れの職業でありながら“なるのが難しい”とされるひとつですが、現在、その医師になるためにハンガリーへ向かう若者が増えているとのこと。なぜ日本の大学ではなくハンガリーなのでしょうか? ハンガリーの医科大学の日本代表事務局『一般財団法人ハンガリー医科大学事務局』広報課長・中谷さんに話を聞きました。
同事務局では2006年からハンガリーへ医学留学する学生のサポートを行っており、これまで200人以上の学生が卒業、現在は年に60人〜80人ほどの日本人学生が進学しており、これは他の国への進学と比べ最も多い人数なのだそう。
「いちばんの理由は、日本の大学の医学部に比べて入学のハードルが低いこと」と中谷さん。日本の医学部は偏差値が高く、学費の負担が少ない国公立大だとセンター試験(現・大学入学共通テスト)含め必要な科目が多く、さらに難易度も上がります。私立大学であれば必要科目は減り少し難易度は下がるものの、6年間の学費は一番高いところだと約5000万円と金銭的な負担はかなり大きくなります。
「ハンガリーでは必要科目が英語と理系科目に絞られるため、難易度も日本に比べれば低い。学費は6年間の総額で1200万円〜1500万円ほどです。日本の国公立大より総額は高くなりますが、私大に比べれば学費を半分以下に抑えることが可能です。一部の優秀な学生には6年間の学費免除など優遇措置もあります。年によって異なりますが3人に1人ほどが対象となり、日本の国立大より学費・生活費を抑えられるケースも」(中谷さん)
卒業試験に合格することでEU圏で働くことができる医師資格を取得、日本とアメリカの医師国家試験を受験し合格すればトリプルライセンスを得ることもできます。
メリットばかりではなく厳しい面もあります。日本の医学部でも難関と言われる解剖学や生理学・病理学などの科目を“英語で乗り越える”という壁が学生の前に立ちはだかります。「入学後はかなりの猛勉強が必要。入学したものの必要な努力ができず、留年を重ね退学してしまうことも。強い意志を持ち続け努力することが卒業へ繋がる」と中谷さんは語ります。
無事卒業できるのは現時点では7割ほど。しかし英語で医学を学んだ経験は相当な強みになり、ハンガリーの医学部卒業生は日本の病院においても高い評価を受けています。最近では日本の医学部の合格を蹴って、ハンガリーへの進学を選ぶ学生もいるそうです。