4月に新入社員を迎えた企業・団体では、研修期間一段落というところも多いのではないでしょうか。本業に直結する実務はもちろん、中には研修を、若手社員が社会問題や会社の理念を“自分ごと”として捉えるための場と位置付けている企業もあります。
サントリーホールディングス(本社:大阪市北区、以下、サントリー)が実施する若手研修の一つは、森の中が会場。入社2年目以上の若手が対象で、のこぎりと枝切りばさみを手に行なわれています。“飲料メーカーと森”という意外な組み合わせの背景や、地域にもたらす影響、入社2年目以降の社員を対象に行う狙いなどについて取材しました。
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◆飲料メーカーにとって水は命
サントリーは、企業理念に「水と生きる」を掲げています。今だけでなく将来にわたり、責任をもって水を守るため、国内工場で組み上げる量の2倍以上の地下水を育めるように取り組んでいるといいます。
その一つが、2003年から全国22か所、総面積約1万2000ヘクタールの森林で展開している“森づくり”。水資源を守り、森の生物多様性を保全する目的で、「サントリー天然水の森」と銘打って進められています。
兵庫県西脇市にも「天然水の森 ひょうご西脇門柳山(にしわきもんりゅうざん)」があります。兵庫県が進める森づくりに同社が参画。2010年に、兵庫県、西脇市、兵庫県緑化推進協会との4者間で協定を結んだもので、2014年から若手社員が、常緑樹の伐採や枝打ちなどを通して森林整備を手がけています。今月、同森で行われている今年の研修には、主に2〜3年目の社員約200人が2日間に分かれて参加しています。
◆伐採を行う意味とは?
豊かな水を育むには、雨水を多く吸収する“ふかふかの土”が大事とのこと。手入れされていない森は、木が生い茂り光が届かず、下草が生えません。)一年を通して、緑の葉をつける樹木(常緑樹)の伐採を行うことで、「光が届く→下草が生える→生き物が育まれ多様な生態系ができる→土壌がふかふかになる→豊かな水を育むことにつながる」という流れができます。
◆森の中に入ってみると……
想像以上に急な傾斜。足を踏ん張って立つのがやっとなほどです。腰を落としてのこぎりで幹の根元を切り、枝を一本ずつカット。なかなかの重労働です。しかし、初めは慣れない手つきだった社員も、森林組合のメンバーから指導を受けてコツをつかむと、徐々に太い幹も切れるほどに上達していきました。