神戸連続児童殺傷事件で、土師(はせ)淳君(当時11歳)が殺害され、5月24日で26年となるのに合わせ、父親の守さんがラジオ関西など報道機関各社に手記を寄せた。
この26年、心を落ち着かせる時間がどれだけあっただろうか。加害者の男性による手記「絶歌」の出版、少年事件の記録廃棄問題…
加害者の男性は2004年に医療少年院を仮退院した。しかし2015年6月に「元少年A」として手記「絶歌」を出版、物議をかもした。 男性は自らの近況を知らせる手紙を守さんのもとに届けていたのだが、手記の出版に強く憤り、抗議した守さんは2016、2017年は手紙の受け取りを拒否した。そして2018年から手紙は途絶えた。
守さんは、それまで「少しずつ、自分のしたことに向き合っているような印象を受けた」と語っていた。男性にとって、一定の更生がなされたのかも知れないと思った矢先の出版だった。
「手記の出版は、私たちに対する、精神的苦痛を与えた傷害罪。制限のない自由はあり得ない」と淡々と語る守さんの眼差しは険しい。「彼(加害者の男性)に対する矯正教育は、まったく無意味だった」。
守さんは続ける。「彼は一生、重い十字架を背負い続ける。時間が経過して『もう事件を忘れました』とは言わせない」。
償いとは何か、それに対する被害者・遺族の受け止めは…。
事件から26年経った今年も、男性からの手紙は届いていない。守さんは「私達の次男、淳の命が奪われなければいけなかったのかについて、私達が納得するような解答を求め続けている。男性が、私たちの問いに答える義務があると思うし、答えて欲しいと思っている」と話す。
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今年の5月24日は、私たちの次男の26回目の命日になります。何年経とうとも、亡くなった子供への私たちの想いは変わることはありません。
加害男性からの手紙は、今年も届いていません。何故、私達の次男の命が奪われなければいけなかったのかという問いを、私たちは以前から発し続けています。加害男性は、私たちの問いに答える義務があると思いますし、答えて欲しいと思っています。
昨年10月に神戸連続児童連続殺傷事件の事件記録が廃棄されていたことが明らかになりました。重要事件の事件記録は永久保存にするという最高裁の内規があるにも関わらず、内規を考慮することもなく廃棄するという行為は、通常の組織では有り得ないことです。遺族の事件記録を閲覧したいという思いを蔑ろにするような行為は、絶対に許されるようなことではないと思います。何故このようなことが起こったかということをきちんと調査し、それに対する対策を施したうえで、確実な記録保存の手順を確立することが重要だと思います。
兵庫県では、犯罪被害者支援条例の制定については、他府県に遅れをとっていましたが、斎藤元彦知事が就任されてから条例制定の話が進み、昨年7月から犯罪被害者等支援条例検討委員会が開催され、今年3月16日に県議会で可決され、3月22日に公布されました。条例の制定は遅れましたが、非常に優れた内容になっており、全国で初めて、被害者の権利保護をうたった条例です。兵庫県民のセーフティネットの一つとして重要な柱になるものと思います。
昨年(2022年)3月、「新あすの会」が、立ち遅れている犯罪被害者への経済補償の改善を求めて活動を開始しました。上川陽子元法務大臣をはじめとする犯罪被害者等保護・支援体制の一層の推進を図るPT(プロジェクトチーム)が提言案をまとめ、4月13日に司法制度調査会に提出の運びとなりました。今後の経過を慎重に見極めていく必要がありますが、犯罪被害者への経済補償の大幅な改善策がまとまることを期待しているところです。
今後も、犯罪被害者を取り巻く環境が改善され、一般の方々の理解が進んでいくことを願っています。
令和5年5月24日 土師 守