サッカー元スペイン代表のMFアンドレス・イニエスタ選手が、25日、神戸市内で記者会見を行い、今夏でヴィッセル神戸を退団することを発表した。クリムゾンレッドの一員になり、“神戸市民”として歩んだ約5年、サッカー界のスーパースターは、港町のサッカークラブ、サポーター、そして神戸っ子に大きなものをもたらした。
会見の冒頭、「日本に、神戸に、そしてヴィッセル神戸に来たことは、自分の人生の中でとった最高の決断の1つであり、これからもそうあり続ける」と語ったイニエスタ選手は、数多の言葉をつむいで感謝の思いを語った。
「このクラブで、多くの素晴らしい仲間に囲まれながら、人としてもプロとしても大きく成長することができました。さらに、サッカーだけにとどまらず、この素晴らしい国の文化を体感し、味わうこともできました。自分の家族を温かく歓迎してくれたこの国に対して、今では特別な環境を抱いています」。
「いい時もあれば、苦しい時もありました。自分が神戸に来た時に目標としてかかげていたタイトル獲得の達成であったり、ACLへの2度の出場だったり、様々な歴史を刻んできました。しかし同時に、物事が思ったようにいかない昨シーズンのように、非常に苦しい時期もありました。ただ、そういった経験がチームと仲間たちをより強くしてくれたと思っています」
ヴィッセル神戸のトップ、三木谷浩史会長からの招へいを受け、2018年夏、ノエビアスタジアム神戸のピッチに降り立ったイニエスタ選手。その卓越したテクニックは、サポーターの度肝を抜いた。ルーカス・ポドルスキ選手のアシストを受けてJ初ゴールを決めたときの大歓声は、スタジアムを揺らした。
ダビド・ビジャ氏、トーマス・フェルマーレン氏、セルジ・サンペール選手といったFCバルセロナでともにプレーした仲間とともに挑んだ2019年シーズン後半は、まさに黄金期だった。
サガン鳥栖戦。スペイン代表の同僚だったFWフェルナンド・トーレス選手(当時サガン鳥栖)の引退試合で見せた超絶ダイレクトフィードは、歴史に残る1シーンだ。
スペクタクルな、いかにも「バルサらしい」サッカーで勝ち上がったその年の天皇杯では、新装された国立競技場のこけら落としとなった決勝でも躍動。チームを初タイトル獲得に導き、クラブが目標とするアジアでの戦いにも挑むことができた。さらに、現在はヨーロッパを舞台に活躍中の日本代表FW古橋亨梧選手(セルティックFC)の得点感覚のさらなる覚醒も、イニエスタ選手の存在あってこそだった。
2020年と2022年の2度、クラブとしてチャレンジできたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)。ともにけがに悩まされた大会で、思うような活躍ができたわけではなかったが、特に2020年にベスト4に進めたのは、身を犠牲にしてもチームの勝利のために躍動したキャプテンの姿があったから……。