駅や会社など、場所を問わず「飲みたい」と思ったら、すぐに買えるのがうれしい缶飲料。中でも缶コーヒーは仕事を頑張りたいタイミングや朝の眠気覚ましに活躍するアイテムですが、実は日本の企業から生まれたということをご存知でしょうか?
それが兵庫県のコーヒー専業メーカー「UCC上島珈琲株式会社」(本社所在地:神戸市中央区)が1969年に発売スタートした『UCCミルクコーヒー』です(発売当初の商品名は『UCCコーヒーミルク入り』)。
当時のコーヒーは喫茶店で飲む「特別な飲み物」という扱いで、家庭やオフィスでは飲み方や淹れ方が浸透していなかったそう。しかし、創業者・上島忠雄さんは「コーヒーをいつでもどこでも手軽に飲めるものにしたい」という野望を抱いていました。
出張で全国を飛び回っていた上島さん。ある日、駅の売店で冷蔵の瓶入りコーヒー牛乳を購入。ところが一口飲んだタイミングで発車ベルが鳴ってしまい、大半を飲み残して瓶を返却せざるをえなくなりました。
「その頃、瓶は重く割れてしまうことから列車に持ち込むことができず、売店に返却するのが必須でした。飲みかけのコーヒーがいつまでも気になったという上島は『瓶はあかん。缶入りのコーヒーにしたらどこでも飲めるはずや!』とひらめいたそうです」(広報担当)
その時の「もったいない」という思いから「缶入り」のアイデアを思いついたという上島さんは、自らが中心となり開発を進めていきます。
フレーバーが「ミルクコーヒー」なのにもこだわりが。その当時、コーヒーをブラックで飲む習慣があまり浸透しておらず、ミルクやシュガーを入れて飲むのが親しまれていました。また「甘いもの」「ミルクが入った食べ物・飲み物」が好まれていた風潮から、多くの人が求める味わいを手軽に楽しめるようにという願いを込めているといいます。
「常温で長期保存できる・いつでもどこでもおいしいコーヒーが手軽に飲めるという新たな価値を追求したため、製品化の際には多くの苦労がありました。なんとか発売までこぎつけても、世界初の商品ゆえおいしさや便利さが理解されず……。営業社員のみならず、総出で販売・PR活動を展開しましたが、売上はなかなか伸びませんでした」(広報担当)
1964年には東海道新幹線が開通しました。東京・大阪間を行き来する人が増えたことから、駅の売店での販売にも力を入れはじめます。そしてその翌年、大阪で開催された「日本万国博覧会」が大きな転機に。たくさんの来場者の目に留まり、そこから全国へと『UCCミルクコーヒー』が広がっていったのです。