神戸市北区の路上で2010年10月、堤将太さん(当時16歳・高校2年)が殺害された事件で、殺人罪に問われた元少年(30・事件当時17歳 記事上は「男」と表記)の裁判員裁判の初公判が7日、神戸地裁で開かれ、男は「(将太さんに対する)殺すつもりはありませんでした」と述べ、殺意を否認した。客観的事実については認めた。
起訴状によると、男は2010年10月4日午後10時45分ごろ、神戸市北区筑紫が丘の歩道上などで、将太さんの上半身などを折りたたみ式ナイフで複数回突き刺すなどし、失血死させたとされる。
検察側は、男の起訴前に精神鑑定(約5か月の鑑定留置)を行い、責任能力があったと判断した。
冒頭陳述で、男は高校2年の時に、青森県内の高校で暴力行為などの問題行動があり退学し、神戸市内の祖母宅に身を寄せていた。男の父親は男の言動を危惧し、精神科での診療を促すなどしたことを明らかにした。
そして、「男は同年代の“不良のような”男性に反感を持ち、犯行当日も将太さんを見て、同じような感情を抱いた」などと指摘した。
一方、弁護側は起訴後の精神鑑定の結果を踏まえ、統合失調症などの疾患により、善悪を判断し、それに基づいて行動する能力が極めて低下している「心神耗弱」を理由に、刑を軽くするよう求めた。
そして犯行当日、将太さんを見かけた時に「自分に迫ってくる不良がいる。そういう人物を退散させなければ」という思いにかられて犯行に及んだ」と述べた。
男は入廷時、被害者参加として検察官の後ろに着席した遺族5人に対し目を合わすことなく、終始うつむいていた。