2年前の東京五輪に出場した元ハンドボール日本代表選手が、6月24日放送のラジオ番組に出演し、現役時代から現在に至るまでの思いを語った。
元ハンドボール日本代表の永田しおりさんは、小学校でバスケットボール、中学校でバレーボールに取り組むも、1998年に長野で行われた冬季五輪をきっかけに抱いた「オリンピックに出たい」という夢もあり、未経験ながら高校からハンドボールへの挑戦を決意。そこで頭角を現すと、高校卒業後は熊本県山鹿市を拠点とする実業団のオムロンハンドボール部（現、オムロンピンディーズ）へ進んだ。
日本屈指のハンドボールの名門チームに進んで驚いたのは、高校時代との実力の違い。周りは日本代表選手ばかりで、スピードもパワーも桁違い。「練習についていくにもひと苦労だった」と当時を振り返った。
実業団加入から5年が経った2011年、念願の日本代表に選出。自身が目指した最初のオリンピック、2012年のロンドン五輪が開催される1年前のことだった。およそ1年の合宿を経て挑戦するも、日本は惜しくも本大会出場を逃した。
その後、4年間かけて挑戦したリオ・デ・ジャネイロ五輪だったが、アジア予選の最終戦で韓国に敗れ、優勝国のみが得られるオリンピックへの出場権を逃すことに。この敗戦をきっかけに引退する選手も多かったようで、自身も「ここにすごく懸けていたので、オリンピックに行けないことが決まっときに初めてハンドボールを辞めたいと監督に伝えましたね。気持ちが切れてしまって……」と、当時の悲痛な思いを吐露した。
当時28歳だった永田さんが引退を踏みとどまったのは、監督の言葉があったからだという。
「東京五輪が決まっていたし、2019年には熊本の世界選手権も決まっていた。『これにチャレンジできる人はいない』『今だったらチャレンジできる』と、いろんな人から頑張れと（励まされた）。押しに弱かったですね。でも今思うと、そのときに背中を押してくれた皆さんに感謝しています」（永田さん）
2019年に開催された熊本の第24回世界女子選手権以降、東京オリンピックに向けてデンマークで単身練習に励んだものの、新型コロナウイルスの影響により東京五輪は1年の延期を余儀なくされた。「メディアでは『1年延期でさらに準備期間ができましたね』と言われましたが、内心は最悪だと思っていました。（いまが）状態がいいのに、また1年練習するのかと思いました」と、そのときは明かすことのできなかった本音を語った。
周囲の人々の「頑張れ」という言葉でなんとか気持ちを保ち、2021年、東京五輪に出場。ハンドボール女子日本代表『おりひめJAPAN』は、1976年モントリオール五輪以来44年ぶりとなる本大会出場だった。永田さんは「結果は良くなかったが、出場できたことに意味があった」と語った。
オリンピック出場という長年の夢を叶えた永田さんは、その翌年となる2022年に引退を発表。引退後はコーチとしてオムロンに残ったが、2022年6月に開催された高松宮記念杯第10回全日本社会人選手権大会をもってコーチを退任。その後、ハンドボールを広めるためのコーチングを学ぶべく、デンマークへ留学した。
デンマークでは“褒める”指導を学んだそうで、「今後は日本で、世代関係なくハンドボールの楽しさを伝え、普及活動をしていくことを目標としている」という。
これからオリンピックを目指す子どもたちに向けて、永田さんは「早く宿題を終わらせるとか、練習でシュートを3本決めるとか、目標をちょっとずつ決めていったら勝手に楽しくなる」とコメント。さらに、「目標を作って進んでいくことで、ゴールの目標も出てくる。一つひとつこなすことでオリンピックにたどり着くと思います」とエールを送った。
