神戸に生まれ、神戸で制作を続けた、昭和期を代表する洋画家・小磯良平氏、その作品を多数収蔵し展示を行っているのが、1992年に開館した神戸市立小磯記念美術館(神戸市東灘区)だ。昨年11月に開館30周年を迎え、新たな歴史を刻んでいる。
小磯氏が亡くなった翌年の1989年に、油彩・素描・版画など約2,000点の作品が、アトリエ・蔵書・諸資料と共に遺族により神戸市に寄贈されたことが美術館の始まりだ。延床面積約4000平方メートル、収蔵作品約3200点と、規模・内容とも全国有数の個人記念美術館である。
中庭には、小磯氏のアトリエが移築・復元されている。神戸市東灘区の住吉山手にあったものを解体して運んだもので、絵具の飛び散った床材も元の通りに並べられているという。アトリエの中には、実際に小磯氏が使用したイーゼルやパレットのほか、作品のモチーフとなった楽器や家具などが展示されており、制作当時の雰囲気を味わうことができる。
美術館には来館者が自由に使える図書コーナーも設置。美術出版社の画集や『岩波 世界の巨匠』『世界美術全集』『名画への旅』といった書籍がラインナップしている。現在、「小磯良平作品選Ⅱ」を開催している。
併せて、いま同美術館で開催され多くの人でにぎわっているのが、漫画家・青池保子さんの大規模な原画展「漫画家生活60周年記念 青池保子 Contrail 航跡のかがやき」だ。同展について、担当学芸員・金井紀子さんに話を聞いた。
中学3年生でデビューを果たした青池氏は、美術や歴史に関する漫画を数多く描き、独創的なストーリーと美しい絵で独自の世界を築いてきた。
イブの肋骨から作られた、“ヴァン・ローゼ族”の青年たちの冒険を描くSFコメディ『イブの息子たち』は、当時の少女漫画界に衝撃を与えたという。
また、1976年に連載を開始し、現在でも熱狂的なファンをもつ名作『エロイカより愛をこめて』や、宝塚で歌劇化された『アルカサル―王城―』など、数々のヒット作を生み出した青池氏だが、今なお現役で漫画を描き続けている。