ときどき耳にする「お日様の香り」という言葉。「直射日光で死んだダニのにおい」という噂も広まっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。ラジオ番組『Clip』(ラジオ関西)内、神戸電子専門学校の学生が独自のレポートを発表するコーナー「走れ! Clip特派員!」でも話題に。詳しく調査してみました。
そもそも、太陽ににおいはあるのでしょうか? 明石市立天文科学館(兵庫県明石市)の学芸員・沖中さんに尋ねてみました。
太陽はおもに水素とヘリウムから成り、核融合反応を起こした水素がヘリウムへと変化する過程で発生したエネルギーによって熱く輝いているのだそう。太陽の大部分を占める水素とヘリウムは、どちらも無臭の気体。そして、水素とヘリウム以外の元素は全体の約0.1パーセントほどで、酸素、炭素、窒素と続きます。
そのため、「基本的に、太陽に香りはないと考えられます。あるとしたら、わずかに含まれる硫黄の働きによって温泉のようなにおいがするかもしれません」というのが沖中さんの分析。「温泉のようなにおい」というのは、布団を取り込んだときなどに感じる「お日様の香り」とはイメージが少し異なりますね。
太陽そのものの香りではないとなると、一体どのような香りを指すのか? 「お日様の香り」を研究していたという株式会社カネボウ化粧品(東京都中央区)に尋ねてみました。
同社では、縁側で日向ぼっこをしたときのにおい・外で干した布団や洗濯物などから感じるあたたかみのあるにおいを、「お日様の香り」「太陽の香り」と呼んでいるとのこと。心地よさを感じる香り・ホッとできるあたたかみのある香りは化粧品などの香りにおいても大切な感覚であるため、それらを表現するために研究を行なったといいます。
研究では、日光の下で数時間乾燥させた清潔な木綿タオルから発生している微量の揮発(きはつ)性成分を採集し、精密分析機器によって分析。その結果、微量ではあるものの香水の原料としても使用される「アルデヒド」「ケトン」といった香気成分が検出されました。これら微量の香気成分が集まることで、心地よくホッとできる「お日様の香り」が構成されると結論づけられました。
さらに、ダニが存在しない状況下でも「お日様の香り」が発生したことから、ダニの死骸(しがい)とは無関係であることが実証されました。
同社が2000年に発売した香水『エアーパフューマンス オードトワレ』(現在は生産終了)では、実験から分析された「お日様の香り」が香りの一部として使用されていたのだとか。
ほかにも、花王株式会社(東京都中央区)から販売されていた柔軟剤『ハミングフレア』には「陽だまりの香り」(現在は生産終了)の商品も。同社によると、柑橘系のフローラルシトラスを「陽だまりの香り」と定義づけていたといいます。
一概に「お日様の香り」を定義づけることはできないものの、「心地よい・爽やかな」香りという点は共通していました。多くの人に愛される「お日様の香り」。洗濯物を取り込んだ際に改めて感じてみてはいかがでしょうか。
※ラジオ関西『Clip月曜日』2023年7月3日放送回より