最近SNSでよく見かける、モコモコしたカラフルなラグ。既製品だけでなく、「タフティング」と呼ばれる手法で自作する人も増えており、そのワークショップが今、話題を集めています。Instagramで「#タフティング」と検索すると、その投稿数はおよそ2.8万件(2023年9月3日現在)にものぼります。そこで、今回はこのタフティングについて知るべく、ワークショップスタジオの主宰者に話を聞きました。
タフティングとは、カーペットやラグを製作するための織物の技法のこと。“タフティングガン”という専用の器具を使って土台となる布に毛糸を打ち込み、糸で絵を描くように模様や形を作り、ラグや壁飾りを完成させます。
「数年前から海外のアーティストによって独創的な模様を描くタフティング作品が制作されるようになり、SNSをきっかけに特に韓国で人気が高まったことで、近年は日本でも広まりつつある」というのは、今年6月、神戸にオープンしたタフティングのワークショップスタジオ「FAVO rug studio」を主催する奥泉未優さんです。タフティング作品は毛糸の種類や色、毛足の長さなどを変えることでオリジナルの個性的な作品を作ることが可能で、その自由度の高さからハンドメイド好きや流行に敏感な若い世代を中心に流行。「自分でもやってみたい!」とワークショップに足を運ぶ人が増えているそうです。
当初は、奥泉さんもそんな“ハンドメイド好き”の1人でした。およそ3年前、新型コロナ禍で仕事が休業になって時間を持て余していた頃、SNSでカラフルなラグを製作する動画や写真を発見し、早速ワークショップに参加。簡単なようで奥の深い世界に魅了され、100円均一ショップや手芸店で素材を購入するところから始め、およそ半年間の練習期間を経て自作のラグを販売するようになり、「手作りの楽しさをたくさんの人に体験してほしい!」とスタジオをオープンさせました。
SNSの動画などでは、簡単に模様を描けるように見えるタフティングですが、きれいに完成させるためには、細かい作業に慣れることやコツをつかむことが必要になるといいます。なにより、糸を打ち込むタフティングガンの重さはおよそ1キロ。製品にもよりますが、奥泉さんのワークショップに訪れる人は、まずその器具の重さに驚くことも多いそうです。参加者は、自分で持ち込んだイラストや画像をプロジェクターで布に投影して下書きし、その線をなぞるようにガンを打ち込むことで、4時間から5時間程度かけて世界に一つだけのオリジナルのラグを完成させていきます。
奥泉さんによると、タフティングの一番の魅力は時間を忘れて没頭できること。スマホをタフティングガンに持ち替え、ひたすら糸を打ち込み模様を描いて完成させるという作業の達成感に病みつきになるそうです。実際に、スタジオを訪れるお客さんに「難しいところは手伝いますよ」と声をかけても、「自分でやります!」とひとりで完成させるというケースも多いといいます。
現在、タフティングが体験できるスタジオはまだ全国でも数が少なく、特に兵庫県には奥泉さんのスタジオをいれて2軒のみ。奥泉さんは、「タフティングは、完成した作品だけでなく作る時間ごと楽しめるハンドメイドです。ただ飾るだけでなく、敷いたり踏んだり座ったりして手触りも楽しめる“使えるアート”なので、今後もっと多くの人に体験してもらって、この魅力を広めていきたいです」と語っていました。
(取材・文=村川千晶)