弘法大師・空海が東寺(教王護国寺・京都市南区)で真言宗を開き、1200年を迎えた。
2023年はその記念年に当たる。
794年の平安遷都から2年後、東寺は大極殿や西寺とともに創建された。そして823年、嵯峨天皇は、唐で密教を学んだ弘法大師・空海に東寺を託した(下賜)。
この時、空海は東寺を真言密教の根本道場として整え、東寺から密教の教えを発信していった。 官立寺院だった東寺は、以後、密教寺院として変容していく。 一方、高野山(和歌山県高野町)は816年に、同じく嵯峨天皇から下賜された修行の地と位置付けられている。
世界文化遺産・東寺では10月、これを祝い金堂、講堂、五重塔、御影堂で「慶讃大法会」が開かれた。
最終日に当たる「結願(けちがん)」を迎えた14日に執り行われた御影堂(みえどう)の法要に、世界的なパーカッション奏者、ツトム・ヤマシタ氏による奉納演奏で華を添えた。
京都出身のツトム・ヤマシタ氏は、5歳でピアノ、8歳で打楽器を始めた。17歳でアメリカに渡り、1970年代に小澤征爾指揮、ニューヨーク・フィルのコンサートで現代音楽家・武満徹の『カシオペア』のソリストとして演奏、話題となった。以来、前衛音楽家として世界に名を知られるようになる。
結願法要では空海の故郷、讃岐(香川県)で産出される名石「サヌカイト」の響きを読経に乗せた。
「サヌカイト」は黒色で非常に堅く、叩くと高く美しい音がすることから”カンカン石”と呼ばれる。縄文~弥生時代には矢じりや石刀など生活用具としての役割を果たし、江戸時代には石琴などの楽器や合図にも使われてきた。