一方通行の道路をワゴン車でバックし、男性をはねて死亡させたとして、自動車運転処罰法違反（危険運転致死）罪に問われた男（63）の裁判員裁判で、神戸地裁は27日、同罪を適用し懲役2年6か月（求刑・懲役5年）の実刑判決を言い渡した。
男は2021年4月22日、兵庫県尼崎市でワゴン車を運転中、一方通行の道路をバックさせて約60メートル逆走。横断歩道を渡っていた自転車の男性（当時72）をはね、急性硬膜下血腫で死亡させたとされる。
男は当時、時速約16キロで走行していた。
裁判では、危険運転罪を構成する要件の1つとして、通行禁止道路での運転が重大な事故を及ぼす速度だったかが争点となった。
弁護側は、時速16キロは高速とは言えず、危険運転には当たらないとして、過失運転致死罪が相当と主張していた。
判決で神戸地裁は「後退の場合、バックミラーを目視できないなど、見通しは前進の場合とは比べものにならないほど悪く、後方を通行する人や車を見落とす可能性がある」と指摘。時速16キロでも人と衝突すれば転倒、死亡させることは想定でき、重大な危険を生じさせる速度だと判断、弁護側の主張を退けた。
そして、逆走そのものが危険なのにもかかわらず、この速度でバックしたことを「常識外れの行為」と指摘した。
