国立文楽劇場(大阪市中央区)で4日(土)から始まる「11月文楽公演」を前に、同劇場で取材会が開かれ、出演する太夫(語り)の竹本千歳太夫さん(64)、三味線の竹澤團七さん(87)、人形遣いの桐竹勘十郎さん(70)が意気込みなどを語った。
今回のプログラムは「双蝶々曲輪日記」「面売り」(午前の部)、「奥州安達原」(昼の部)、近松門左衛門作の「冥途の飛脚」(夜の部)。
3人は、近松の300回忌を記念した「冥途の―」で共演する。同作は、実話を基に近松が脚色して作った世話物(江戸時代の町人の生活を描写した作品)の代表作で、上演される「封印切の段」「道行相合かご」では、飛脚屋の忠兵衛が横領した金を遊女の身請け金として使い、死を覚悟しつつ2人で逃げる様子が描かれている。
千歳太夫さんは、近松作品について、「字余り字足らずが多くて難儀するが、見せ場も多い。世話物は内容がリアルなので表現が生々しくならないようにしたい」とした上で「梅川(遊女)の最初のクドキ(心情を訴える場面)は、しみじみと語りたい」と話した。
團七さんは「人物の情や風景の色合いをお客様に伝えたい。お客様にそれが伝わった時に、芸術が生まれると思っている。私が楽しんでいる分、お客様も楽しんで盛り上がってもらえたら最高」と、上気した表情で述べ、「師匠の『一撥(ひとばち)も無駄な撥はない。全部(音で)語れ』との教え通り、しっかり頑張りたい」と決意を表した。
「私は人形を動かしすぎるきらいがあるので、動きを抑えた忠兵衛にしたい」と言う勘十郎さんは「でも浄瑠璃が耳に入ると感情が動いてしまうから、できないかもしれない」と、穏やかな笑み。「1冊の本の中に300年前の作者が考えて作った文章が並んでいる。当時の人々の生活や考え方、義理人情など、色々なことが詰まっている。その時代のにおいを舞台で少しでも出せたら」と意欲をにじませた。
取材会の後、3人をはじめとする文楽関係者らは、大阪市内にある近松門左衛門の墓参りをし、公演の成功などを祈願した。
◆「11月文楽公演」
会場 国立文楽劇場 (〒542-0073 大阪市中央区日本橋1丁目12-10)
日程 11月4日(土)~26日(日) ※14日(火)は休演
第1部「双蝶々曲輪日記」「面売り」午前10時半開演
第2部「奥州安達原」午後2時15分開演
第3部「冥途の飛脚」午後5時45分開演
観劇料 1等5500円(学生3900円)、2等3800円(学生3800円)
予約・問い合わせ 国立劇場チケットセンター0570-07-9900
【国立文楽劇場 公式HP】