幼い頃、誰もが一度は楽しんだ“落書き”。その何にも縛られず、自由に描いた線や色をアートに生まれ変わらせるプロジェクト「Pimazen(ピマズン)」を手掛けているのが、クリエイティブディレクターの前田高志さん。落書きから生まれたアートブックを制作し、より多くの人に活動を知ってもらおうとクラウドファンディングにも挑戦中だ。
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前田さんは大学を卒業後、任天堂株式会社で約15年に渡って広告販促物等のグラフィックデザインを担当。2016年に独立を決意し、『NASU(ナス)』の屋号でフリーランスとして活動を始めた。2018年には仕事では実現できないものづくりを行う会員制クリエイティブコミュニティ『前田デザイン室』を設立し、現在はデザイナーやイラストレーターといったクリエイターのほか、普段はクリエイティブ職以外の仕事をしている人も含む200人以上のメンバーと活動している。
ビジネスから離れた自由なものづくりの中で「もっとデザインやアートを身近に感じてもらいたい」という前田さんの思いから「ピマズン」は生まれたという。
「幼稚園生の頃まではほとんどの人が絵を描くことが好きだったはずです。ところが、小学校に入ると図工の授業が始まり、他者と比較されるようになる。するといつしか『自分は絵や工作が下手だから美術は苦手』という意識が染みついてしまうと思うのです」(前田さん)
そこで、アートから離れてしまった人たちにもう一度描く喜びを思い出してほしいと、誰もが楽しめる落書きをデザインの力でアートに昇華させる“ラクガキアートプロジェクト”「ピマズン」を始動させた。ユニークなプロジェクト名「ピマズン」は、オンラインで打ち合わせに参加していたプロジェクトメンバーの子どもがふと口にした言葉から名付けたという。
プロジェクトはまず、落書きを集めることからスタート。『前田デザイン室』メンバーが描いたものやSNSでの募集で寄せられた落書き一つひとつに色付けやトリミングなどデザインを加え、120点を超える作品に仕上げた。
現在実施しているクラウドファンディングで集まった支援金は、それらのアート作品を1冊にまとめたアートブックの制作費に充てる予定だという。リターンには自分が描いた落書きをプロジェクトメンバーにデザインしてもらえたり、デザイナーとして参加できたりと、アートブックの制作に携われる体験型プランを多数用意した。